仁王先輩のその言葉に部長が話を聞こうじゃないか、とかいって最寄りの喫茶店へ入った。



「で、木原の化けの皮がなんだって?」


「あいつに告白させたんじゃ。あいつに気がある立海の奴ら全員」


「なんだと」


「そんで、今になって告白した奴らは戸惑っちょる」


「何をだよ」


「“あれ、何で俺愛美が好きなんだっけ”」


「あーそのパターンか」



部長と仁王先輩の会話をジュース飲みながら聞いている。会話には参加しない。私はこの詐欺師が嫌いだ。私の危機に直面しても助けてくれなかった。ブタと海藻しかり。
ブタと海藻は馬鹿なだけだろうがこいつは全てわかっていて私を助けなかったんだ。嫌いである。



「そう思うきっかけは…」



そこまで言って彼はゆっくりと私を指差して口許を緩ませた。目障りだ。



「仁王、うちの名前に絡まないで」


「部長すてき」


「名前ちゃんに話あるんじゃが」


「名前がはち切れんばかりに首振ってるから駄目」


「その閉鎖的な性格、治さんと友達なくす」


「名前の友達が四人なのはこの合宿中の話だぜ、名前友達めちゃ多いから。三年の中でも名前妹にしたいとか彼女にしたいとかいうやつ四クラスはいるし。つまり本気で友達少ない仁王に言われたくねーよ」


「部長さんにも随分嫌われたもんじゃのぅ」


「名前が嫌いな奴は大概俺とも合わないの。それに変な性病もってそうなアバズ…変態に好感持てって方が無理」


「部長素敵!」



私が乙女ポーズで部長をほめたら物真似やめろと言われた。別に木原先輩の物真似をしたつもりはない。なんかショックである。



「だったらこのまま話すからいい」


「聞きたくないです」


「聞いた後からの苦情ならなんでも聞いてやるぜよ」


「いや特に。……後輩に滅茶苦茶言われていいなら聞いてやりますよ」


「……交渉成立」


「…じゃあ部長、私これから性格悪くなるんで先帰って下さい。」


「俺はどんな名前でも受け入れるぜ」


「とか言いながら帰るんですねww」


「だって名前が帰れってwwそれに朝飯ボイコットしたのユウジ君にフォローしとかないとまた首と腕が結婚するだろ?」


「あ。…そうですね、お願いします」


 
そうして部長が帰ってすぐ、仁王先輩が喋りだす前に舌打ちをした。それに怯んだのか、少しの沈黙。だから言ったろ、性格悪くなるって。私はお構い無く言葉を発した。