「い…ったぁ゛ー……」



気を失ったのか。気付いた時には身体中が痛かった。……何が起きた。わけがわからん。背中が酷く痛む。目の前にはパツキン。




「だ、大丈夫かっ!?」


「…ヘタヤ先輩」


「あーもうええわそれで!それより怪我…っ!」


「足、平気ですか。つーか色々平気ですか?」


「…ま、…巻きこんだんは、俺やし…」


「私は足怪我しても平気ですけど、先輩はテニス部で、しかもレギュラーなんですからどっちを心配するかくらいわかるでしょう」


「っ、やけど…!ぬかるみに滑って転がり落ちるのに巻き込むなんてカッコ悪すぎやし、それに、俺のこと庇って背中打ったやんけ!」


「ふはっ、本当にヘタレや」



つい笑い出してしまった。
庇ったのか、どうりで痛いわけだ。無意識だった。笑った私に言葉をなくすパツキン先輩にどうしても言わなければならないことがあった。



「なんで腕押さえ付けてんですかw押し倒してるみたいじゃないですかw」


「っ、ちちゃっちゃちゃちゃうねん!たたた、たたお倒れた時にな!倒れたときにこうなってん!」


「ぶっ!ふははっ、噛みすぎ〜!あかんお腹痛いー」



思いっきり爆笑してしまった。その後直ぐに忍足様が皆を引き連れて助けに来てくれた。
この体勢を見て全員ヘタヤ先輩にそんな甲斐性があったのかと言った。それもツボだった。



「ったく、しゃーないな…、二人共怪我は?」


「じ、実は私の貞操が…」


「なんもしてへんー!!」


「そんだけ動けるなら怪我してないですねw」


「お、おう…おおきに…」



私が顔を背けて身の貞操を脅かされたとボケれば元気よく突っ込んできたので大丈夫だろう。そして、そのヘタヤ先輩の横で黒いオーラ放ってる財前君は一体どうした。



「………えっと、あれか。臭いか。あ、くっせぇ」


「お、俺もや…土くっさいわ……!」


「…何で先輩無傷で名前が切り傷だらけなんすか」


「ヘタヤ先輩悪運強いんだよ財前君」


「なに怪我させてんねん、ホンマありえん」


「言う程でっかい怪我ないよ財前君。」

「ふざけんなや、謙也君の癖になにさらしてんねん」


「私相手が誰でも同じことしてたよ」



財前君が不機嫌気味なので何か言おうとするヘタヤ先輩を遮って私が彼の言葉に答える。
財前君が指摘したヘタヤ先輩無傷で名前ちゃん切り傷事件はヘタヤ先輩が一番気にしている。だから突っ込んであげるな、なんて口に出しては言えない。今は感情が高ぶってるだけだろう。



「財前君、心配してくれてありがとう。そしてお願いがあります」


「…………………何」


「おぶって欲しいwいや、なんか背中強打したらしくてさ」


「そ、そんなん完全に俺のせいやんか!俺がおぶってくわ!」


「え、」



ヘタヤ先輩が慌ててこっちに来て私を背負おうとしてくれたのだが、その彼の背中を思いっきり財前君がひっぱたいた。ちょwwなにしてんのw痛そうwwヘタヤ先輩めっちゃ悶えてるww



「ヘタレに任したらまたこけるやろ。でしゃばんなヘタレの癖に」


「財前君ヘタヤ先輩またこけたらどうすんのw凄い音したよww」


「…知らん」



知らんとか言いながら私を背負ってくれる彼はイケメンだと思います。