「うぇ」


「…うぇとは酷いのぅ」


今練習中のはずなのに、バルコニーのような場所に立海の銀髪…あぁ仁王先輩か。仁王先輩がいた。椅子に腰掛けてこちらを見ている。
仁王先輩と言えば木原先輩へのガチ度が高くて面白くない部類だ。よしスルーしよう。



「失礼しました…」


「待ちんしゃい」


「………木原先輩ならテニスコートじゃないですか?」


「…振られた。」


「はっ!?ぶふっ、」


「…噴き出すとは失礼な奴じゃのぅ」


「すみません面白そうっすね、話聞かせてもらえませんか」


「お前さん無神経って言われんか」


「特に好意を抱いていない人にはよく言われます。そんなことより振られた経緯を是非」


「…まーくん傷付いたナリ」


「話す気ないなら私戻りますけど」


「この薄情者」


 
振られたとか面白いことを言う先輩の話を聞くことになった。先輩は自分の横の椅子に座れと手で叩いたが私は一つ感覚をあけて向かい合って座った。睨まれたが当然の距離である。ユウジ先輩や小春ちゃんなら隣に座るが。



「…依存しまくっとった。」


「ほう」


「他の奴に笑いかけるあいつを見とると嫉妬で狂いそうじゃった」


「ほうほう」


「いなくなったら俺は生きていけんと本気で感じた」


「ふっwwほ、ほう」


「……はずなんじゃ」


「…はず?」


「そう思ってた、はずなんだがのぉ…振られてみたら全然、何とも思わんようになっとった」


「それは先輩の尻が軽いだけじゃないですか」


「……………いい度胸やの、お前さん。」


「なんだ大して面白くないじゃないですか。私行きますね」



聞いて損した。安心しなさい、彼のファン達よ。なん筋もある彼はやっぱり尻が軽いらしいよ。傷心中だからチャンスだよ!


「俺は本気だったぜよ」


「いやー、仁王先輩の女癖の悪さ聞いてるんで騙されないですよ」


「信じんしゃい」


「無理ですよ、信じて欲しかったらもっと面白く振られて下さい」


「……最低やの」


「あ、私仁王先輩みたいに女とっかえひっかえする人嫌いなんですよ。すみません。」


「…面白く、振られたら信じるんじゃな」


「はい?」



私が聞き返すより早く彼はバルコニーから出ていった。うーん、流石に言い過ぎたかな。ま、いいや。


「名前ー!部長に仕事押し付けるなんて酷い!」


「面白い話があるので許してくださーい」


 

とりあえず、仁王先輩のギャグセンスを見定めようと思う。