『泣いてるん?』


『っ、』



何で外で一人で泣いてなんかいたのかは忘れた。ガキやし親に怒られたとかそんな理由やったと思う。そんな時に俺におんなじくらいのガキが話しかけてきよった。


 
『あ、あんな、私ボケれるねんで!オカンおったら漫才やったるねんけどな、もうおらんねん……。や、やから、一人ボケやるわ!』


『…は?なんやねん、うっざいわ!どっか行け』


『泣いとる奴置いてなんてどっか行けん!ひ、一人ボケってどうやったらええんやろ』


『知るか!関係ないやろ、うっといねん!』


『じ、実は私も泣きそうやねん』


『は?』


『オカンはおらんくなるしな、なんかダメやねん。親父じゃダメやねん。やから今めっちゃ泣きたい気分やったんやけど、少年見とったらどーにか泣かさんよう笑わせな思たんや』


『…意味、わからへん』


『なぁ、どないしたら笑えるんかなぁ?私、笑えそーにないねん…』


『………お前が、笑えば…俺も笑ったる』


『……ほんま?あ、でもあかんねん、笑えるネタないねん』


『……鏡見ぃや。』


『そやな自分のアホ面見てたら笑けてくる……って女の子に何言うねん!無神経……ってホンマや!不細工すぎる!』



鏡を取り出して叫ぶそいつを見ていたらなんで泣いとんのかわからんくなった。それに馬鹿やん、とか思って、つい口が緩んでいた。



『わ、笑いごとやないって!お、お嫁行かれへん……!』


『……アホやな』


 

お前のおかげで俺が笑っとるんやから嫁に行かれへんのくらい我慢出来るやろ、とわけのわからん理由をつけた。
照れ隠しだったのか頭を叩きながら言ったらなぜか納得したように去っていった。それから何度かあの場所に行ったけれど、会えることはなかった。










 


 


「あ…あの時の少年だったんだね。美少年ってイケメンに育つんだね、びっくりした」


「……なんやねんそれ」


「いやー感謝してるよ。…おかげで、めっちゃ笑えるようになったし」

 

微笑みながらそんなことを言うこの人は、知らんやろな。俺が学校でどんだけ自分のこと探したか。別に知らんでええけど、会ってしまったんやから…もう、逃がしてやらん。


 

「覚悟しとって下さい」


「え、襲撃するほど嫌われてんの私」


 

………ま、ええか。無駄に変な奴に目つけられるよりは。