「崖を見付けたのでロッククライミングしてました、お騒がせしてすみませんでした」



皆に頭を下げる。嘘っつーかなんつーか…。大概の奴は気付いてる。だがまぁ追求するやぼったい奴はいないらしい。
横に移動させた財前君の機嫌が悪いままだ。どうしよう。



「お疲れ」


「……部長…」


「皆はこれからパーティーだから俺らは部屋でケーキ食いながら狩りパーティーしようぜ。」


「部長すてき」



部長がおぶるとか言い出したが丁寧にお断りした。
パーティーは跡部先輩が「興醒めだ」といってやらなくなったらしい。そして部長に続いてヒョコヒョコと情けなく歩いていたらいきなり横から腕を引かれて用具置き場だかなんだかよくわからない狭くて暗い所に連れ込まれた。持ち上げられたので足は痛くなかったが本気でビビった。
え、あれ、なにこれ。




「―…なんで」


「うっおビビった!財前君か…ど、どうしたの」


「何であんなん庇うんや…、あいつにはめられた言うたらええんに…!その怪我だって…っ」


「落ち着こうか。木原先輩に何か言われたの財前君」


「…………名前とユウジ先輩に脅されてるから助けろ言われた」


「財前君に一蹴されて機嫌悪かったから私突き落としたのか彼女。納得」


「突き落とした…?」


「うん、軽く肩押されて気づいたら崖でした的な。」


「………」


「待て待て待て、待ちなさい。」



思いっきり顔を歪ませたかと思ったら無表情になって木原先輩の部屋があるほうに向かおうとする彼に滅茶苦茶焦った。慌てて袖をがっつり掴んだ。イケメンは怒らせるもんじゃないな。


「心配せんでも向こうが悪いんやし」


「……財前君、私今から性格悪くなるからよろしく」


「…は?」


「正直木原先輩がどーなろうがどうでもいい。ユウジ先輩とか小春ちゃん、部長に財前君が彼女関連でうわぁあってなんのが嫌。」


「……やけど、こんなん公表せずに居るんか。俺はムカつく、あのブッさい顔殴りたなる」


「公表してるよ、財前君に。その他に公表しても別に意味ないかなって…財前君が知ってくれてたらいいや。」
「…………」


「ぎゃふっ!よよよ汚れる!めっちゃ高そうなシャツに泥がつくよ財前君!」



痛いくらい抱き締められた。というより痛い。彼は今日一体どうした。正装が汚れる、と背中をペシペシ叩くが力が緩まない。本当にどうした。今日人の正装汚してばっかだな…。




「財前どこ行きよっ……ぎゃぁああ!ななななっなっなにしてんねや変態っ!財前のアホー!」



私はヘタレ先輩にエアクラッシャーという必殺技を引き継いでいたようだ。