「げふっ…!た、たんま…!ユウジ先輩待って、私は赤い髪のきみに…もとい遠山君に話が……!」


「あ゛?」


「ねーちゃん何でボロボロなん?」


「ふ…っ、これはね少年…。ロッククライミングとは建前で実はさっきまで悪い妖怪と戦っていたんだよ。足をやられて本来の姿に戻った時に偶然木原先輩が通りかかったんだ。だから彼女は混乱していただろう。気にしないであげてくれたまえ」


「ば、ばけもんやっつけたん?」


「ふっふっふ…中々に強いやつだったが私のメタルクラッシャーの前には手も足も……ぐえ!ユウジ先輩あかん!強く絞めすぎ…!ぎぶっ…!」


「メタルクラッシャーやってみろや」



どうやら怒らせたらしい。
だ、だってこうしないと色々あれじゃん…!
普通に考えて部活の邪魔になんのは目に見えてるんだから回避しなきゃだし!財前君はこんなんで練習時間裂きたくないだろうし!



「ユウジ先輩マジ離してもらっていいっすか…げほっぐえ」


「……何する気や」


「嫌味いいに」


「…一分や。」「りょうかぐえっげほ」



一分もらって離してもらえるのかと思ったら担がれた。右足大したことないのに。彼はやはり優しい。かーわーいーい!


「やっぱ30秒や」


「私どんだけ早口ww」



こんな会話をしながら木原先輩のとこへ担がれたまま移動した。周りの視線が痛い。何か言いたそうにする人は沢山いたが、今のユウジ先輩の人相が極悪だから何も言えないのだろう。好都合である。



「名前、ちゃん…ど、どこにいたの?そんなにボロボロで……皆に迷惑かけちゃだめだよ」


「そっすねー。私もよく把握してないっすー。先輩なら知ってますよね」


「し、知らない!言いがかりよしてよ!」


「え?地理得意そうとか思ったんですけどそれ言いがかりっすかー?すみませーん」


「ば…っバカにして…!」


「超ほめてますよー得意そうって言ってるじゃないですか。ま、ブスの僻みはこれで終わりますー。………“いらん”ホモに焦らされて大失敗やな。口には気を付けた方がええですよ、先輩。」


「…ッ、…!」


最後だけ小声でいった。ユウジ先輩が何言ったんやと凄んでくるが言えるわけがない。
言えないのでどう答えようか困っているとあの豪華すぎる扉を息切らして汗だくの財前君が蹴破った。豪華すぎる扉を蹴破った。貧乏人の私には出来ん。



「ざ、財前君どうしたのやっぱり痴女か!ダメだよ危ないから夜中一人で歩いたら!」


「もう突っ込むんも怠い」


ユウジ先輩にイラつかれるのはわかっている、それは悲しいがツンデレなんだと思うことにした。財前君と目が合った。やべぇイケメンだな、正装ってタキシード的なあれなんだね超イケメン、なんて思ってたらすげぇ速さで目の前まで来たと思ったら頭を掴まれ引き寄せられた。本日ニ度目の胸板ダイブである。頭を掴む強さユウジ先輩よか強かった。つまりすげぇ痛かった。
だが痛がる前にめったに声を荒げない彼の怒声が響いた。




「金輪際俺にも名前にも関わんな…、次はホンマ潰す」



彼は一体どうした。



「落ち着こうか財前君、汗やばいよ。痴女に襲われなかった?大丈夫?」


「お前この状況で…ホンマどんな神経しとんねん。」


「何やその怪我」


「え、顔怪我してる?元からだよ」


「お前の必殺技メタルクラッシャーちゃうやろエアクラッシャーやろ」



財前君の手が頭から顔にいき頬で止まった。新しい必殺技を修得してしまった。どうやら私は空気が読めなくなったらしい。