「ここまで来たらいっそ財前君が良かった、もう砂利道だし。」


「真顔で言うん止めてくれん?」


「ともかく見付けてくれてありがとうございます、エクスタシーさん。あの、他に誰か捜索してくれてる方いますか」


「……ユウジに小春や。それに財前と、立海の仁王君に…ちゅーか全員や」


「まじでか携帯貸して下さい危ないから戻ってくるようにって伝えなきゃ」


「危ないって…どないしたんその怪我。何でその有り様で人の心配しとるん自分」


「この広い庭、砂利道は整備されてるんですけどちょっとはずれると小さい崖みたいになってるんです。落ちたら大変ですよ。早く携帯貸すか連絡お願いします」



立ち上がるのがだるくてはいつくばったままお願いしたら凄い可哀想な子を見る目で見られた。
なんなんだ、確かに可哀想だが。そういえばエクスタシーさんはスーツみたいなもんを着ている。パーティーだよね、がっつり忘れてた。



「…名前ちゃん見付けたから戻るように言ったわ。」


「ありがとうございます。じゃあエクスタシーさんもパーティー戻って下さい。お騒がせしました」


「は?」


「え?」


「なんなんそれ?ボケられても困るんやけど。マジボケなん?」


「私ユウジ先輩か部長がいないとボケませんよ」


「何で怪我した女の子放置してパーティーとかやると思うんや、おかしいで」


「大した怪我じゃないし…それにエクスタシーさん女子苦手なんですよね?あれ?逆ナンが苦手なんだっけ。まぁいいやどっちでも」


「……そんなん気にしとる場合とちゃうやろ。ホンマにもう……なんで自分の心配せんの…?」


「してますよ、野草見分けられなかったらどうしようって」


「意味わからへん…」



そう言って頭を抱えた彼は少しだけ年相応に見えた。
…なんか、いつもの余裕な感じもオカン説教とかもないし、なんかへこんでないか?間違いないな。うん、だから年相応に見えたんだ。



「なんかすみませんパーティーとかがっつり木原先輩といちゃつけたのに邪魔しましたよね。」


「だからそれなんなん?なんでそんな思考になるかホンマわからへん」


「え、だからへこんでるんじゃないんですか?」



私変なこと言ったのか?
エクスタシーさんにガン見されんの気分良くないからやめて欲しいんだが…。
そんな風に思っていたら彼はしゃがみこみ顔を片手で覆って喋り出した。おいお前私は合宿所に戻りたいんだぞ



「敵わんなー…、へこむっちゅーか…信じるもんが揺らいで戸惑ってんねん。なんでこうなんのやろ」


「間違えたなら訂正してやり直せばいいじゃないですか」


「そんな簡単な話ちゃうねん…」


「揺らぐなら自分で確かめて自分信じればいいじゃないですか。変なとこ年相応なんですね。完璧とかこだわってるから気にしすぎなんですよ、誰だって戸惑いも間違いもあります」


「…名前ちゃん相変わらず失礼やけど話聞いてくれるんやな。変に優しいし」


「笑ってないから」


「…なんやそれ」


「つまんなそうな顔してテニスの試合やってる人が普段仲間といるときは楽しそうにオカン説教してるのに今年相応なんでなんとなく。…自分で言っててわけわからん……。とりあえずせっかくイケメンなんだから笑っとけ、みたいな」


「……せやな…、名前ちゃんだけイケメン言うてくれるんやしうじうじしてもしゃーないな」


「私エクスタシーさんのそういうとこ嫌いだ、イケメンなんて腐る程言われてるクセに」


「俺は名前ちゃん好きなんやけど」


「何で急に吹っ切れてるんですか」


「自分のせいやで」


「意味わからん」


「その右足、応急処置くらいしか出来んけど貸してみぃ」


「それを最初に言って欲しかった」


「せや、皆自分のことが先走るんや。それが普通なんやで。名前ちゃんがおかしいねん」


「あれ、なんでだろうおかしい呼ばわりされてる」


「見事に突き刺さっとるな、引っこ抜いたらオーバーに血出て貧血起こすかもしれん」


「…え…」


「無理に抜いたら痕残るやろなぁ…、あ、痛いもんな今抜いたるわ」


「私実は木人間でそれは娘なんです抜かないで下さい!死ぬ!」


「木人間てなんやねん。安心しぃ、マキロン常備しとんねん俺。」


「い、いやだ嫁入り前に傷ものになりたくない…!」


「やらしい意味に聞こえるんやけど」


「とんだ変態だったんですね」


「傷ものにした責任とったるから抜いてええ?」


「嫌だなぁこれはエクスタシーさんの責任なんかじゃないですよ、傷ものなんてそんな…。木原先輩傷ものにしたんだからそっちの責任とりにいって下さいよ」


「抜いた後また突っ込んでええ?」


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

 
這いずりながら逃げたら嘘やから、と言って掴まった。
嘘に聞こえない。

その後応急措置にとハンカチできつく縛られた。マキロンといいハンカチといい用意良すぎだろ…。顔に出ていたのか、俺保健委員やねんと言ってきた。いかがわしい意味にしか聞こえなかった。


 

「皆んとこ行くで」


「正装、汚れますよ」


「名前ちゃんやったら汚してええで」


「嫌だおぶわれたくない…!おぶわれたらなんか大切なもん奪われる気がする…!歩けますから肩貸して下さい」


「身長差考えてないやろ」


「……」



おぶわれるなら本気で財前君が良かった。悲惨である。