、 「残念やったな、今財前居らんで。」 「財前君ちゃいます小春ちゃん奪いに来ました」 「……………何キレてんねんお前。」 私を小春ちゃんから引き剥がして技決めたユウジ先輩に部屋から引きずり出されてさっきと同様にラウンジに連れてこられた。トラウマである。 私がキレてるとか言い出したユウジ先輩。彼は何を言ってるんだ。 「あの女にまたなんか言われたんか」 「……………」 「黙っとんのやったら吐かせたるわ」 「ぐえ!ギブギブギブ!」 「だったらとっとと吐けや!言えへん、なんて可愛らしい思考ないやろお前!」 ギリギリといつもより強めに首をしめられた。 腕を叩きながら吐きますと言ったら緩めてはくれたが離してはくれなかった。 「………木原先輩、が」 「何や」 「…ユウジ先輩と小春ちゃんいらんって…。あんなホモいらん言うたんです」 「………」 「私が財前君目当てや言われんのならええですけど、ちゅーか大当たりですけど、なんで二人んこといらんとか言われなあかんのですか!小春ちゃんは天才で優しいしユウジ先輩は首締めの天才やのに!…な、なんか悔し…っ、ぐて…!」 「何鼻水たらしながら盛大にボケてんねんドアホ」 「う、嘘です、ユウジ先輩はあれです、…………モノマネの天才です。ずびっ」 悔し涙と鼻水をたらしながら言ったら涙が止まらなかった。何で私はあの時木原先輩に言い返さなかったんだろうか。 鼻水がつく、と言って私の首から腕を離したユウジ先輩は乱暴にも程があるくらい乱暴に頭を撫でた。10円ハゲは確実である。 「う゛、っえぐっ、ずびっ、ひぐぅ゛…」 「きったないな、お前ホンマきったない」 「ぅ゛ぇええっユウジ先輩のドアホ!小春ちゃんに愛想つかされてまえばええんや!」 「なんやと!?」 「その無茶苦茶な乱暴さ加減がッ……好きです」 「うわきっしょ…お前ホンマきしょいからやめろや。次きしょいこと言うたら倍で絞めるで。チッ、嫌いとか言うたら窓から落としてやったんに」 「どっちにしろ死によるやないですか!好き言うたら絞殺やし嫌いやったら落死やないですか!」 「絞殺選ばしたるわ。きったないねんとっとと拭け」 「うっく、」 涙ながらにボケをかます私の顔が相当酷かったのか、ユウジ先輩がジャージの袖で涙を拭き取ってきた。顔をまぁゴシゴシと。「……鼻水ついたやんけ!」と怖い顔してくる彼は実は優しいって私信じてる。めげない。 「そんなことでいちいち泣きべそかくなや」 「私にはユウジ先輩と小春ちゃんいらん言われたんはそんなこととちゃうもん…天変地異が起こるよりあかんもん…」 「………あんな女こっちから願い下げやっちゅーねん。いらん言われてせーせーしとるわ。……もうええから泣き止めドアホ」 「ぅ゛、」 また目もとをゴシゴシと乱暴に拭かれた、と思ったらユウジ先輩の腕を掴んだ人がいて本気でびっくりした。見上げたらエクスタシーさんでびっくりした。 「何普通に擦ってんねや!名前ちゃんの目腫れてまうで!」 「……何でこんなとこおんねん白石。ちゅーか謙也まで」 「え、い、いやな、…な、なぁ白石?」 「俺は通りすがりやで。謙也は知らんけど」 「し、白石の裏切り者ッ!」 「では私は予定があるのでズビビッ失礼します」 「とっとと行け、後でなんか奢れや」 「ちょ、名前ちゃん回復早ない?」 「仲良くない人に泣いている所を見せるのは気が引けます。失礼しました!」 早足で待たせてしまったであろう部長を迎えにロビーまで走った。…盛大に泣いてるとこあの二人に見られたのか。屈辱である。 |