「うっ、…」


「大丈夫か名前!」


「わ、私は…ここまでのようだ…」


「そんな…!パフェ6個にどんぶり8つも食うからぁああ!だからあんな怪しい人についていったらダメだって言ったのにぃいい!」


「奢らせといてそりゃないナリ…」



合宿所に戻ってからちょっとした茶番劇をしていたら絶望したような目の仁王先輩が口挟んできた。知るかシカトだ。
謝られても困る私は奢りでチャラにした。嫌いなのは仕方ない。



「はー…確実に二キロは増えるな…」


「二キロですむお前がすげぇわ。」


「今日1日は四天宝寺は撮らない方向で。何あいつ急にデブってね?って財前君に思われたくないんで」


「腹膨らむんだな。あれか、ギャルそね的な」


「私もびっくりしてます」


「こんなとこユウジ君と小春ちゃんに見付かったらいじられるだろうな、よし四天宝寺は撮らない方向で」


「先輩すてき」


「ただ立海には何あいつ急にデブってね?って思われるぞ」


「誰も見てないでしょうよ」
「幸村ガン見してるけど」


「嘘やんww」



先輩に言われて幸村先輩を見ると本当にこっちを見ていたので驚いた。あれだよ、何あいつ急にデブってね?って視線だよ、それ以上はなんもないよ。



「青学行ってきます」


「嫌だ俺も行く」


「なんで私が幸村先輩に睨まれなきゃならないんですか」


「わかんねーけど…何あいつ急にデブってね?って視線だけじゃねーよ」


「そのフレーズいいですよねww」


「言うと思ったw」



立海から逃げて一番平和そうな青学で写真を撮ることにした。氷帝は跡部先輩がめんどくさいし立海は幸村先輩に睨まれるし四天宝寺は財前君いるから今の腹で行きたくない。だったら青学じゃんか、と。



「なんだと…」


「なんか青学の不二にも睨まれてね?あとあのスーパールーキー君も」


「妊婦だと思われたのかな」


「無茶ボケにも程があるww」



どうにも居心地が悪くなってこうなったら氷帝だと思って氷帝のコートへ行く。だが悲惨な事態になった。



「そんなに腹の膨れた女が珍しいか!?いつも美少女はべらせやがって金持ち共が!そんなにデブが珍しいか!貴様らの腹も引退したらだるんだるんになるくせに!」


「落ち着けw」



私が出来上がっている写真を地面に叩き付けてそう言うのには理由がある。氷帝のほぼ全員から変な視線をいただいているのだ。それを忍足様は面白いもんを見るように機嫌よさげに眺めるのだ。なんか屈辱である。



「くっそ…デブれ!全員デブれ!写真引き伸ばしてデブにしてやろうか!」


「面白いこと言うんだね名字さん」


「幻聴ではないでしょうか」



私が僻み100%のセリフを吐いたら後ろから幸村先輩の声がした。振り向かずに答えた。振り向いてたまるか。部長が振り向いたがすぐ前を向いた。一体何を見た。



「名字さん、……君って四天宝寺の子が好きなんだっけ」


「小春ちゃんとユウジ先輩と財前君と部長が好きです。確かに三人は四天宝寺ですね」


「俺が言ってるのはその好きじゃないよ。わかってるくせに面倒な返ししないでくれる?」


「はぁ…」



これは尋問を通り越して拷問である。
恋愛に準ずる好きを聞いたのだと予想はついたがユウジ先輩もそんなんじゃない、財前君に至ってはユウジ先輩が言った通り彼がイケメン過ぎて私と釣り合わなくて飽きて捨てられんのがオチだ。それに小春ちゃんは小春ちゃん、部長は部長だ。

実にさみしい女である。




「友達といる方が楽しいので、特にそういった感情がありません」


「…………そう」



それだけ言うと去っていった彼。何なんだ一体。しかもてっきり腹突っ込まれるかと思ったのに。
そんなことを考えていたら練習を切り上げた四天宝寺の方々が合宿所に戻っていくところが見えた。何気なくこちらを見たユウジ先輩が私に気付いたらしい。顔を歪めて口パクで喋ってきた。



「……“何急にデブってんねん”?」


「部長言わないでw」


 
さすがユウジ先輩だ、ちゃんと突っ込んでくれた。