「財前君、」


「……こーいうとこ苦手やった?」


「いや、憧れです」



イケメンに手を掴まれ連れてこられたのは駅前にある落ち着いた雰囲気のオシャレなカフェで戸惑った。なにこの子来るトコまでイケメンなんだけど。

このオシャレな雰囲気にどうにもむず痒くて仕方がない。



「あ、」


「ん?」


「忘れとった。部活終わったからデートしてくれん?」


「え、連れてきてから言うの、それ」


「忘れとったって。それにその他に邪魔されたないし」


「財前君、じゃあさ、あのさ、」


「……どうしたん」


「オシャレすぎてなんか、周りがカップルだし、私には不相応と言いますか……勿体無い場所でございます」


「つまり落ち着かん、と」


「そうとも言う」


「そのうち慣れるやろ、こういうとこでデートしとこ」


「慣れる程連れてくる気ですか」


「そのつもりやけど」




どうしよう。
なんか財前君イケイケ財前君になってるよ。なにこの子怖い。
どうしよう。いやまじでどうしよう。だってイケメンだしイケイケだし来る所までオシャレだし、もうどうしたらいいのよこれ。
本気で焦ってたらガラス張りになってる店内から外にいる団体さんが見えた。見覚えのありすぎるジャージである。



「……財前君、」


「コーヒーでええ?」


「あ、うんありがとう…、いや、あのさ」


「なんか甘いもん頼む?」


「そう美味しそうなんだよね、高いけどこのティラミ……じゃなくてさ、財前君」


「俺出すから頼も」


「お願い聞いて」


「どうしたん」


「さっき外で謙也先輩が私と財前君に気付いてこっち指差してなんか叫んでたよ」


「出よ」


「ティラミス」


「和菓子屋行こ」


「うんわかった」



謙也先輩のことを報告したら手を掴まれて出るとか言い出した財前君。謙也先輩と喧嘩でもしたのか彼は。
引っ張られるまま入ってきた入口とは逆の出口から小走りで店を出る。




「わーなんやざいぜーんぐうぜーん、なにしてんのーデートかいなー、マセガキやなー二人して」


「…………………」


「あだだ!財前君手が痛いです!ついでに言い忘れてたけど謙也先輩だけじゃなくて皆いたよ!」



出口から出たとこに白石先輩がいて財前君が私の手を握り潰してきた。実に痛い。



「ホンマ吐きそうなくらいイケメンっすね部長」


「財前に褒められてもうた。謙也に自慢しとくわ」


「クラスの女共がアド教えろ言うたんで教えましたけど部長と知り合いなんすよね、俺ってホンマ親切やわー」


「お前のは親切とちゃう!ただの情報漏洩や!あの見ず知らずの女子からの大量のメールはお前のせいやったんか財前!」


「逃げんで」



白石先輩をわざわざ怒らせてから逃げる財前君に手を引かれて全力疾走した。
十分は走っただろうか、なんとか白石先輩をまいて住宅街らしき所に来てしまった。



「………休日に受験生二人が街に居るって…」


「受験余裕なのかな」


「彼女居らんのやな」


「言わないであげて!思っても言ったら可哀想だよ」


「…まぁええわ、あの二人は撒いたし…和菓子屋行こか」



全力疾走したくせに汗一つかいてない財前君にやっぱ天界人だと思いながらあんみつとか草餅とかを想像してにやついた。

手を掴まれたままだったので引っ張られた、ら。逆方向からそれ以上に強く引っ張られた。変な声を出してすっころんでしまったがこれは不可抗力である。



「………………………ユウジ先輩は何しとんですか」


「にやついた顔があったんでつい、やってもうた」


「やってもうたやないですよ離してくださいデート中なんすけど」


「は?デート?ちゃうやろ食べ歩きやろ、買い食いすなって教わらんかったんか行儀悪い」


「ユウジ先輩に言われたないっすわ」


「なんやとおいこら財前お前ちょい面貸せや」


「あ、小春さん」



財前君段々ユウジ先輩の扱い方プロになってきたよね。そんなことを言う暇もなく腕を引っ張られてまたしても全力疾走しました。もうなんなのこれ。今更だけどなんで逃げるの。



「財前君、そろそろ私の足が限界です」


「もう着く。…ったく、ホンマ邪魔な人らや」



本気で嫌そうに舌打ちした財前君になんで逃げるのなんて聞けなかった。
そんなことしてるうちに外観がレトロで素敵な和菓子屋さんについた。テンションあがって繋がれていたままの手をぶんぶん振りながら店にはいった。笑われた。




「わーざいぜーんぐうぜーん、お前和菓子屋とか来んねんなーかわええやーん」


「なんやざいぜーんぐうぜーん、お前デートやのうて食いモンで釣っとるだけやろ」


「ざいぜーんぐうぜーん、これもなんかの縁やろ相席しようや」


「ざいぜーんって流行っとるんー?ワイもやるー!」


「そろそろ逃げんと危なかね。俺は退散すると」




なぜか四天宝寺の方々が皆いらっしゃった。千歳先輩が団子片手に逃げたら財前君がブチ切れた。
この後のことはあまり語るまい……、おそろしや。




「名前」


「ん?」


「もう身分偽ってそういうとこ泊まり行こうや」


「財前君は入れるだろうけど私は補導されるよ」




――――――


いや、あの
えっと
ざいぜーんぐうぜーんがやりたかったんです←

ちょっとふざけすぎましたよね申し訳ない…!

書いてて楽しかったです、リクエストありがとうござい
ました!



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