「あ、名前ちゃんや」


「浮気か!誰や名前て!」


「せやなぁ、ユウ君には教えといたろかな」



中学あがってすぐやろか。テニス部でダブルスするようになって一氏と組んですぐや。部活帰りにランドセル背負った名前ちゃんを見かけた。
川原なんかで何してんのやろう。
近くまで言ってみると川原に座り込んで背中丸めてテスト用紙握り締めとった。



「名前ちゃん、もう暗いで〜!どうしたん?」


「っ、…な、なんや小春ちゃんやん。どうもせんよー、暇潰しとっただけやで」



後ろから声かけたら肩ビクつかして持ってたテスト用紙ぐしゃぐしゃに丸めて隠されてしまった。
随分変わったなぁって思う。
笑顔で答えてくれる。まぁ小学生にしてはやけに大人びてるけど。



「せや、この人とダブルス組んだんやで!」



ユウ君と抱き合って打ち合わせしといたダンス踊ってやったんよ!名前ちゃんはポカンとしとったけどすぐ笑ってなんやそれーって言ってきた。



「お前小春の何やねん」
 「私小春ちゃんの従兄弟ですー。なんや二人めっちゃおもろいですわ」


「は?」


「え?」


「アカン!小春ー!なんやこいつ気に入らん!」


「ぐえっ!っ、え?…な、なんやねん!痛っ」



一氏がいきなり名前ちゃんの首絞めあげるからホンマ吃驚してん。今の別に変なとこなかったんやないの、ダブルス組んでからも一氏の怒りポイントはよおわからんわ。
とりあえず一氏叱って理由聞いた。そんなにへこまんといてや、あんた可愛いないんやから。



「……俺悪ないで。こいつが作り笑いなんざしよるんが悪いねん。」


「………………え、」


「こいつみたいにおもろいと思ってないような奴に笑われるんやったら盛大に滑った方がマシや!」



名前ちゃん睨み付けた後そっぽ向いてもうた一氏に驚いた。なんやの、なんで初対面でそないなことわかんの。
…きっと人をよく見てるんやろなぁ。観察眼っちゅーのが優れとる。

正直一氏とのダブルス先行き不安やってんけど…なんや大丈夫に思えてきたわ。




「………私、ちゃんと笑っとりますやん。なんやこの人。目ぇ悪いんちゃう?」


「あぁ゛!?」


「やめんさいよ二人共〜。」



睨み合う二人を離して名前ちゃん見送った。
この二人は会わしたらあかんなぁ。そう思っとったら次の日名前ちゃんから話し掛けられた。一氏にまたなんか言われたんやろか。



「小春ちゃん、あの緑の人名前なんて言うん?」


「ごめんなぁ、なにされたん?叱っとくわ」


「ちゃう、そんなんとちゃうよ。……これ、…」


「ん?」



昨日持っとったテスト用紙やろか。三教科全部満点の答案用紙やった。元々くしゃくしゃやったけど、今は見事に真っ二つに破られてる。なんやこれ。まさか一氏が破ったん?ホンマにそうならあいつの髪ハゲ散らかしたろ。小道具いらずや。



「ちゃんと謝らせるから!ごめんなぁ、せっかく満点やったのに……」


「…ええねん。こんなもん破れた方がええ。ただの紙、やし。」


「え、でも…」


「や、やっぱええ。私行くわ」



破れてしまっとるテスト用紙ポケットに突っ込んで逃げていった名前ちゃん。
どうしたんやろ、まだ小学生なんやから満点とか自慢したりしてええのに…。これは一氏吐かせなあかんな。






 

「小春…俺ホンマに何もしてへんで!」


「嘘つく奴とはダブルスなんて組めへんわ」


「すまん」


「さっさと言いなさい」


「………夜、コンビニ行った時にあいつが公園のベンチにおって、」


「危ないわねぇ、夜に…。ちゃんと注意しとかな」


「…そこで一人で泣きべそかいてんのを見て、」


「あらぁ?なんやいい展開やないの!慰めたげたん?」


「テスト破ったった」


「なんでよ!」


「こ、小春!拾ったボール投げつけんのやめ…っ!」


「なんでそうなるんか理解出来んわ!一氏は泣いてる女の子にトドメ刺したんやで!」


「や、聞いてや小春!」


「もう一氏くっつかんといて!」


「小春ぅ〜…」



部活の片付けやっとる時に聞いたらこれや。なんなん一氏。
この光景みとった白石君がなんか理由あったんちゃう?聞いたげればええやん、ってフォローしてきた。
この人ホンマに同い年には見えんわー…。一氏はフォローしてくれた白石君に噛み付いとるし。組むなら白石君がよかったわ。しゃーないわぁ、一氏叱って改めて理由聞こ。



「夜やし、気に食わんけどガキやから…さっさと家帰れて注意してん。その後、…」













 




「邪魔やもん」


「あ?何や人が親切に声かけたっとるんにその態度は…もう知らんわ」


「あそこいたら、私邪魔やもん」


「…………お前道塞ぐ程デブでもデカくもないやろ」



泣いてる女は世界一面倒やと思う。
小学校高学年辺りからか。女子からの好きですっちゅー告白みたいなもんを受け始めたんは。
好きです、付き合って下さい。そう言われたから俺は別に好きやないし付き合う気はないて言うたら泣かれた。周りは一氏君ヒドイ、とか言って泣いとる女子をなだめていた。
他にどう言えっちゅーんや。告白受け取りゃええんか?
受けたら受けたでまたぐちぐち文句つけるくせに。泣けば被害者はそっちやもんな。なんや新手の悪徳商法か。

だから女は苦手や。泣いとる女は特に。




「作り笑い、て…なんでわかったん?」


「…笑顔が不自然やった、きしょかったんや」


「遠慮ないな」


「なんでお前に遠慮せなあかんねん」


「…そらそうや」



あ、泣いとるくせに笑いよった。まだそっちの方が不自然やない。
ぐしゃぐしゃの紙に涙が落ちた。なんやそれ。
何となく気になってその紙かっさらって携帯で照らして見上げたら満点のテストやった。うわ、なんやこいつテニス部におるいけ好かん白石とかいう奴と同じ部類か。敵や。



「……凄いやろ」


「スゴイデスネー」


「私の価値、それだけやってん。なのにそれも認めてもらえんかったから公園で十分程グレとったんや。………迷惑かけてすんません。もう帰ります。」



ベンチから立ち上がって涙拭いながらテスト用紙返せっちゅーみたいに手ぇ伸ばしてきたからなんか引っかかって返さんかった。
なんやこいつごっつキショイ



「もっぺん言うてみろや」


「…な、なんやねん。謝ったやないですか。すみませんでした、て」


「ちゃうわボケ、この紙っぺらがお前の価値やと?」


「、…それがなんや。テスト全部満点が私の価値や」


「アホかお前。んなもん記録にはあるかもしれんけど殆ど無価値やろ」


「―…っるさいなぁ!偉そうにうっといねん!わかっとるわそんなもん!」


「だったら、」



こんなもんいらんやろ。
手が勝手に真っ二つにそれを破っとった。え、何しとんねん俺。わけわからん。
こいつもびっくりしたように目を見開いてこっち見てきた。

うわ、これ俺やってもうたんやないか?
このパターンは大泣きされるパターンや。




「……今俺が破ったんはただの紙や。リサイクルしろ」


「…え…、…」


「テストの点数で人の価値が決まると思うなや。」


「…だって、」


「親が勉強勉強ってうっさいんか。」


「ちゃう、でも」


「ならええやろ、お前の価値はこんなんちゃうわ。ホレとっとと帰れ」



そのまま手掴んで公園から引きずり出したんや。あれ、俺ホンマ何してん。










 

「…ユウ君」


「なんや俺も自分で何してんのかわからんくなってきた」


「まぁええわ、ただし!名前ちゃんにちゃんと謝りぃや!そんなんやから未だにクラスの女子から怖がられるんよ、ユウ君は!」


「ぅぐ…っ!」



ホンマ白石君見習って欲しいわ。そう思いながら返事させたらその後ずっとしょげとった。そないに名前ちゃんに謝るん嫌なん?もう絶対彼女とか作られへんやん。
その三日後くらいやろうか、名前ちゃんがユウジ先輩って呼び出して後ろひょこひょこついてくるようになったんは。
一氏フォローするつもりで頭の良さだけが人の価値やないって言いたかったんやと思うでって言うたらアタシにまでなついてくれてん。可愛いわー。










 

「っていう昔のこと夢に見たからユウ君に何されたんか教えてや名前ちゃん」


「前フリ長すぎだよ小春ちゃん」




 

――――


なにこれ何がしたいの読みにくくてごめんなさい文がまとまらないうひぃいい

ユウジとの出会いはこんな感じかなって妄想をしたためたらくっそ長くなりましたすみません…

ともかくリクエストありがとうございました!


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