「名前ちゃん俺今日誕生日やねん」


「両肩から手を離してくれたらお祝いの言葉言います」


「やって名前ちゃん離したら逃げるやん」


「逃げながらおめでとうって言うから離して下さいよ」


「あんな、今日デートしてくれん?」


「………」



じっ、とこちらを見る彼女は首を縦に動かすことはないだろう。そんなことわかってんやけど、ついやってしもうた。
ユウジと財前のガードがヤバかった。誘っただけでもよくやったやん俺。




「……私といてもつまらないでしょ。私白石先輩に優しくないし、酷いこと言うし…わざわざそんな奴と誕生日に一緒にいなくても…」



そう気まずそうに目をそらす彼女。
あぁ、嫌なんやなくてむしろ心配してるんや。
自覚あるんやもんな。そんな風に思ったらなんか頬が緩んだ。



「嫌やったら誘わんよ」


「……じゃあ、腕離してくださいよ。逃げませんから」



グッジョブ、誕生日






 



  これは絶対失敗出来ひん。
完璧なエスコートでデート成功させたるで!
張り切ってデートコースを歩き出せばごっつ微妙な顔した名前ちゃんがついてきた。なんやのその顔初めて見たで。


気合い入れ直してまずは新しく出来た小綺麗なカフェやな。あそこは確か彼氏と行きたいデートスポット上位やったはず。
女の子ってああいう店好きやしなぁ。

完ッ璧や!と思ったら名前ちゃんが鼻で笑ってきた。え、どうしたん。趣味じゃなかったんやろか。
でも次の水族館は喜ばんはずがない。行きたいデートスポット第一位やし。

自信を持っていたら水族館を回り終わってから酷く残念なものを見る顔して溜め息つかれた。嘘やん、なにそれ。

……ま、まぁ次の夜景を見たら名前ちゃんも満足するやろ。よっしゃ、最後まで気ぃ抜かんと完璧にこなしたるで!



「な、めっちゃ綺麗やろ」


「…………そうですね」


「………………」


「………………」


「…名前ちゃん、」


「……何ですか」


「…なんか、ごめんな。無理に引っ張って来て……楽しくなかった?」


「やっぱムカつく」


「え、」


「イケメンがそんな切なそうな顔して謝るなっちゅーことです」


「……やって名前ちゃん、今日楽しめんかったやろ?」


「だまらっしゃい!」


「ぶっ、」



カバンを顔面にぶつけられた。え、なんなん。謝っとる人になんちゅう仕打ちや。俺今日誕生日なんやけど。
痛む鼻を擦りながら名前ちゃんを見たらむっちゃ怒っとった。なんでなん




「デートしろなんていうから、ちょっとは白石先輩のイラつく部分が改善されたのかと思った私がアホでした」


「………」


「…誰が……、誰が人気のデートスポットに行きたいなんて言ったんですか。今日は先輩の誕生日でしょ!先輩が行きたいとこ行ってくださいよ。何デートスポットとか選んでんだよ気色悪いな!何で自分の行きたいとこ選ばないんだよエクスタシーが!なんで私に気使ってんですか、先輩が行きたいとこ行ってやりたいことしてりゃ私だってちゃんとお祝いしてます!このイケメン!爽やか!完璧!あほ…ひぅっ」



名前ちゃんに怒られとったんやけど悪口になってへんしそんなん言われても可愛いだけなんやけど。
そう口に出す前に腰引っ付かんで引寄せて抱き締めた。あれ、俺こない手早くないんやけどなぁ、変な声出されてもうた。




「……変に気負うから。私はどこ行こうがそれなりに楽しむ自信はあります。だから行きたいとこ行ってください」


「…………植物園、行きたい」







デートで自分の行きたいとこに行くなんて、考えてへんかった。俺が抱き付いたまま植物園って言ったらやっぱ草好きなんですねって言ってきた。草っちゅーても雑草ちゃうからな。


あーもう…なんでこの子は人の心ん中に入ってくるん。責任とってや






「……白石先輩、離れてください」


「…嫌や」


「………」




誕生日終わるまでずっと口実に抱きついたろ


 




―――――


白石誕生日おめでとう!

企画にちょうどデートがあったからこれで許してね!←


白石好きなのに書けない…!

リクエストありがとうございました!





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