音楽聞きながら曲がり角を曲がった途端顔面に激痛が走った。 状況を把握しようとしたらさらに混乱した。 目の前に私が倒れているからだ。 「…っ、どこみて歩いとんじゃボケコルァ!」 「すすすすすみませんっ!」 「気ぃつけ………ろ…」 五分程互いに固まったままだった。だがよく確認してみると目の前にいる私は中身がユウジ先輩なのだ。そして私はというと鏡を確認したら自分の顔がユウジ先輩だったのだ。 つまり、私とユウジ先輩が入れかわってしまった、ということしか考えられない。 「ありえん」 「うわぁ…ど、どうしよユウジ先輩。いや今は私だから名前って呼んだ方がいいのか」 「アホか。ちゅーかお前俺の身体で変な真似すんなや、大人しくしとけ」 「……………………………変な真似」 「何を想像したんかは聞かんからな。きっしょい奴や………な…」 「…ユウジ先輩、身体は私なんですよ。首絞めようとしても身長の関係で首に抱きついてるだけですよ」「…………」 背中から首に抱きついている状態の私(中身ユウジ先輩)。必死に私(身体ユウジ先輩)の首を絞めようと抱きついてくる。……ちょ、なんだこれ 「ユウジ先輩離して下さいよ、無理ですよ」 「お前の怪力出んやんけ…!なんで動かんねん!」 「ユウジ先輩……あの、胸超当たってるんですよ。色々と危ないから離れて下さいよ」 「……………………最悪や」 「それでですね、胸掴んでみていいですか?いやだってそれ私の身体だし。だって揉むとでかくなるって言いませゴウフッ!」 「お前は俺を変態にしたいんか」 「ユ、ユウジ先輩…この身体はユウジ先輩なんですよ……そんな思いっきりブン殴らなくても……」 「……お前のせいやろが」 「だって短的に言うとムラムラしぶふぐっ」 「黙れ」 やべぇユウジ先輩自分の身体なのに容赦ねぇ。左ストレートが右頬に食い込んだ。 ちょっと混乱しすぎていたから危ない発言していたが痛みのおかげでなんとかなった。 「………ど、どうしようユウジ先輩」 「……とりあえず俺は練習行かな。」 「…とりあえず私は部長のとこ行かなきゃ」 お互い混乱しまくっていたらしく、ユウジ先輩の身体の私は部長の元へ、私の姿のユウジ先輩は練習に向かった。 「名字さんやん。どうしたん」 「あ゛?どうしたて何やねん」 「え、」 あ、まずった俺今名前やった。 練習向かっとる途中に謙也と財前が居って変な顔された。 ………何で俺名前のまま練習来とんのやろ 「あー…よ、呼び出し、されとんねん」 「…な、なんか喋り方、変わったな」 「あ゛!?どこがや何聞いとんねんウスラハゲ!」 「ハ…ハゲッ!?」 「ヘタレがついにうざくなったんちゃいます?」 謙也に突っ込まれてついいつもみたく言い返してもうた。あいつは謙也にこないなこと言わんよな…、またまずった。 そんなこと考えとったら半泣きの謙也見て財前がめっちゃ偉そうに言ってきよった。なんやムカつくな、これ 「なんや余裕やん財前、言うとくけど先輩敬えん奴とかヘタレ以下やで」 「は……、ちょっ…名前が俺にこないなこと言うわけあらへん、こいつ偽モンや謙也くん」 「俺かて名字さんにハゲとか言われんもん!自分の時だけ何言うてんのや!」 なんやこいつら意外と鋭いやん。いや今のは俺のミスか… しゃーない…今は名前やし名前やったるか 「もしくは名前は本物でも誰かに操られとる、コントロールされとるんや」 「財前お前……、ショックやったんはわかるけどな、ちょお落ち着き」 「うっさい黙れヘタレ」 「八つ当たりすんなや!」 ………あかん、イヤや。 絶対嫌や。こいつらの前で名前の身体でおるんがめっちゃ嫌や。おい謙也お前分かりやすすぎやろ、視線が恋してますって言うとる。キモいわ乙女は小春だけやぞ。 財前は自信ありすぎや、なんでこいつがこんな自信満々なんや。わけわからん 気分悪いわ、もうばらそ 「お前らちょお聞け」 「ったく謙也と財前も遅刻かいな。ユウジ二人見とらん?」 「俺に聞くなや、知らんわ」 私のユウジ先輩は完璧である。誰にも気付かれず練習にまで参加している。小春ちゃんには「今日はいつにも増して可愛ないな一氏」と抱き付くのを拒否された。…そんな君も素敵さ……。 「身体が軽い…!」 「なんや調子良さそうやなユウジはん」 「今なら白石なんぞ片手で勝てるわ」 「お、言うなぁ」 石田先輩や小石川先輩にも気づかれなかった。 このことに有頂天になった私は汗すら輝くイケメンの横にどかりと座り頬杖をついてにやりと笑った。 「白石トドメ刺してええか」 「何名前ちゃんみたいなこと言うとるんユウジ」 「今どっちが白石にトドメ刺せるか勝負してん」 「俺お前に嫌われるようなことしたか」 「顔がムカつくんや」 「理不尽すぎやろ」 「この前小春に触ったやろ」「ぶつかっただけやん」 白石先輩は盛大に溜め息をついてから今日おかしいで、と言ってきた。やべ、余計なことすんじゃなかった。 ばれる前に白石先輩から逃げた。 「行くで!小春ーっ!」 「なんや一氏今日元気すぎて引くわ。あんまくっつかんといてや」 「こ…小春ぅ〜…」 「ユウジ今日元気なん?そら良かったなぁ!」 小春ちゃんとラリーやり始めたらなんか小春ちゃんが冷たい。一回もユウ君って呼ばれてない。抱き付かせてくれない。 私は完璧なユウジ先輩になってるはずだ。現に白石先輩と小春ちゃん以外疑われていない。 「………僕に勝つのはまだ早いよ。うぉお!似てる!俺めっちゃ似とる!なぁ凄ない!?」 「なんか今日一氏ホンマ気色悪い。光来たら光とやるから近寄らんといて」 小春ちゃんに完全拒否されて本気で落ち込んでいたら小石川先輩が肩を叩いてきた。なんや今日一段と酷いなって。何やらかしたん?って聞かれたけど答えようがなかった。 「二人共遅い…って何名前ちゃん連れてきてん」 「これ名前ちゃいます中身がユウジ先輩です」 「は、」 「ユウジ先輩なんでばらすんですか!」 「ムカついた」 「早よ戻しましょ俺がおかしくなりそうなんで」 「……ユウ君が名前ちゃんで名前ちゃんがユウ君なん?」 「せやねん!俺の姿形はしとってもそいつ名前やから騙されたらアカンで小春!本物の俺はこっちやで!」 「黙りや一氏!何紛らわしいことしとんじゃワレェ!…名前ちゃんごめんなぁ!あれは誤解なんやで!」 「小春ちゃーん!」 「あ、抱きつくんは元に戻ってからにしてや。なんかその姿でそのテンションやとめっちゃ気色悪いんよ」 「…ま、まぁ…なんか…信じられん話やけど二人が入れ代わってんのはホンマらしいな」 私が小春ちゃんに抱きつこうとしたらまた拒否された。私の姿のユウジ先輩に頭はたかれた。あんま痛くなかった。 「じゃあ、あれやんな、名字さんがユウジっちゅーことはさっきのは名字さんがウスラハゲ言うたんやなくてユウジが言うたんやな」 「ユウジ先輩…私謙也先輩にパツキンとは言いますけどウスラハゲなんて言いませんよ。涙目じゃないですか…訂正してあげて下さい」 「そんなん最高にどうでもええから早よ元に戻そ、名前がユウジ先輩とかホンマ耐えられん、調子こきすぎやねんドブにでも顔面突っ込んで今までの人生後悔しろ」 「財前、言葉も暴力なんやで。」 「ちゅーかなんでそんな悲劇が起きたん」 「こいつが前見て歩かんからや」 「ユウジ先輩が前見て歩かないから」 「つまりはぶつかったんか。……なら話早いわ。」 「え、」 にっこりと笑った白石先輩が私の後ろに来た。私、といってもユウジ先輩だが。なんか嫌だから逃げようとしたら周りを固められている。なんだ一体 「中身名前ちゃん言うても見た目ユウジやからやりやすいわ」 「俺名前の姿のユウジ先輩やん、やりにくい」 「なら代わろか?中身名前ちゃんやから後で色々言われてもええなら代わろか」 「やっぱええです」 「人の頭の上で何を―…」 ユウジ先輩が後ろにいた財前君を見上げて文句つけようとした時だった。後ろにいた白石先輩に頭をひっつかまれて物凄いスピードで前に押し出された。財前君に同じことをされたであろう私の身体のユウジ先輩とおでこを正面衝動してしまい、数分悶えた。 「い゛っづ〜……っ財前何しよんじゃボケェ!」 「ぐぅうう…っ!くっそえくたしー…!いたいたしー…!」 「………お、戻っとるやん。一件落着やな」 「ユウジ先輩やなくて名前、でこ冷やしたるからおいで」 「おどれ…財前……先輩をこんな目に合わせといて何やその態度は…」 「小春ちゃんいたいー!」 「可哀想にー!撫でたげるわね!」 「………」 「こいつ振られよったで!ざっまぁないのー財前くーん!」 「名前ちゃんは痛くて聞いてへんだけやから財前は拗ねんと謙也と外周行ってき。そっからフットワークこなしてから打ってええで。」 「ウザタシー」 「名前ちゃんも外周行くか」 「すみません寄らないで下さい」 にっこりと爽やかな笑顔をした白石先輩がとてつもなく恐ろしかった。 その後普通に練習を始めていて、私は濡らしたタオルをオデコに当てて練習をボケっと見ていた。自分の身体に戻ってからやっぱり確信した。 ユウジ先輩と最初にぶつかった時…… 「唇切れてる」 ぶつかった場所が悪かった。 ――――― なにこれ なにこれ 本当になにこれですね、こんなことになってすみませんでしたぁああ! 書いてるだけなら楽しかったです特に小春ちゃんのあたりが← ともかくリクエストありがとうございました! あとごめんなさい← [*前] | [次#] [戻る] |