愛だけが地球を救うの?









「やっと出来上がりそうですね」

「そうね。長かった〜」





最新作の化粧水がもう少しで出来上がる。様々な成分や製造方法に関しては特許を取る予定で、かなりの自信作になった。そしてようやくサンプルが出来上がって、形になったものを見て達成感をようやく感じることが出来た。





その試作品を手に家に帰る。気分が上がっていたので玄関の様子の違いに気づくことが出来なかった。勢いよく玄関の扉を開けると、そこには隆二と見知らぬ女の人がいた。





「ただいま〜♪……あっ……!」

「えっ……今市君、誰?この女の人…」

「えっと…この人は…」





必死に言い訳を考えていても良い言い訳は全く浮かんでこない。とても気まずい雰囲気の中、救世主が現れた。





「諸星さんおかえりなさい。今日の帰り遅いんで晩御飯いらないですから」

「は…はいっ!」

「榊原さん、ご紹介します。諸星さんで、お手伝いさんなんですよ」

「そうなんですね。今市君、すぐ教えてくれたっていいじゃない」

「そうっすよね、すみません。この時間に来てくれるなんて思ってなくて…」





広臣の機転の利いた良いフォローで、その場をしのいだ。そしてとりあえず「じゃあ部屋の掃除と洗濯だけしておきますね〜着替えてきます」なんて言って部屋に入った。




浮かれていて玄関に自分のものではないハイヒールがあったなんて気が付かなかった。彼女がくるなら一言いっておいてくれてもいいのに…なんて思ったけど、私は広臣の連絡先しか知らないから無理で…




凄く美人で素敵な人だった。どこかで見たことがあったのは、きっと彼女も芸能人の方なんだろう。とてもお似合いで、なんだか少し嫉妬してしまう。




部屋の中で待機していると、どうやらもう帰るようで隆二が送っていきますと言っていたのが聞こえた。玄関のドアが閉まる音が聞こえたのでリビングに出る。そしたら広臣も部屋から出てきた。





「おかえりなさい、早かったね」

「さっきはありがとう、本当に助かった…あの人、隆二の彼女?」

「さぁ、分かんない。でも仕事で一緒になってから連絡取り出してるみたいだけど、俺は正直苦手なタイプだけどね〜」





広臣も知らないなんて驚き。たまたま家の近くに寄ったから来たらしい。後で謝らないと…と思いながらお風呂に入った。





そして深夜1時ごろに隆二が帰ってきた音で起きた。ゆっくりとドアを開けてリビングの様子を伺うと、隆二が頭を抱えながら深いため息をしてソファーに座っていた。





「おかえり、遅かったね」

「……あぁ」

「あの…さっきはごめんね。全然周りが見えてなくて…」

「………。」

「大丈夫?何かあった…?」

「お前さ、この家のルール分かってんの?このことが周りの人にバレたらどうなるか分かってる?」

「だから…謝ってるじゃない」

「それに、プライベートにも口出さないってのも分かってないだろ」

「何?心配してあげてるだけじゃない。それもダメだっての?」

「お前にそこまで心配される筋合いはないから」





腹が立った。そこまで言われるなんて思ってなかったし、何よりもショックだった。だから何も言わずに部屋に戻った。





悔しくて涙が溢れてきた。私たちは確かに仲良しでもないし、関係性なんてよく分からない者同士だ。





最初はいがみ合っていたけど、歩み求めたらダメなの?お互いを知ろうとしたらダメなの?ルール違反なの?もうよく分からない。





初めて隆二の笑顔を見たあの時に、私たちは変われるのかもしれないって思ったのに…





「お互いを理解し合うのには、どうしたらいいの…」





もう私たちは分かり合えないのかな…距離を縮めることもできないのかな…





お互いの距離を測れるモノサシがあればいいのに。






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