ひそやかな呼吸法








なんだかよく分からなくなってきたのでとりあえず部屋に引きこもることにした。親戚のおじさんだって言ったら益々怪しまれるだろうし…




兎にも角にも、これからどうしよう…私が出ていくのもなんか負けた気がするから嫌だし、かといってこのままじゃダメな気もする。




ましてやあの人たちが芸能人だなんて…ていうか男二人でルームシェアかよ。気持ち悪い。




そろそろ会社に行って残った仕事を終わらせないと…化粧をしてリビングに出るとソファーに座ってテレビを見ている隆二って奴がいた。




「どこ行くんだよ。マスコミにこのことを売りに行くつもりか?」

「は?仕事よ仕事。あんた達のことを売ったって何の価値にもならないわ」

「ったく、口の悪い女だな」

「あんたに言われたくないわよ」




こいつと話してるとイライラして仕方がない。そそくさと玄関に向かうと、ちょうど外から帰ってきた臣って奴と鉢合わせた。




「お仕事ですか?」

「えぇ…まぁ」

「すみません。隆二、ああ見えていい奴なんですよ。誤解しないでくださいね」

「あれで?説得力ないですけど」

「あはは、じゃぁ気を付けていってらっしゃい」

「はぁ…」




逆にこの臣って人は掴みにくい…明らかに隆二って奴よりはいい奴だと思うけど…




そんなことはどうでもいい。とにかく、この生活が長く続かないように祈るしかない。




職場に着いてさっそくお呼び出し。今現在制作中の基礎化粧品のサンプルがもう少しで出来上がる様だ。私は製造部のチーフを任されてる。




「あれ、諸星さん…疲れてます?」

「疲れてるもなにも…朝から厄介なことに巻き込まれてね」

「そういえば新居はどうでした?」

「あぁ、新居ね…新居は最高よ?綺麗で広くてさ〜」

「新居は…?」

「まぁ〜うん、最高だったわ」




こんなこと、言ったって誰も信用してくれないだろうし…




そうだ。あいつらの事ネットで調べてみよう。嘘つかれてるかもしれないしね…




名前を検索してみたら、目が飛び出そうなくらい驚いた。この人たち…本物だ。いつもテレビでよく見る人たちだ…




「あれ、チーフ!三代目好きでしたっけ?」

「いや!別に好きってわけじゃ…」

「もう三代目最高ですよね〜!私、今市君が好きなんです!笑顔が可愛くて可愛くて〜」




笑顔…?可愛い…?私にはだいぶ想像もつかないぞ…




「チーフは、誰がタイプですか?」

「わ、私!?えっと……この人…??」

「あー!登坂君ですね!かっこいいですよね〜!チーフってばメンクイですか?」




とりあえずその場しのぎ…



この先、どうなっちゃうんだろう…





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