ロイヤルミルクティ | ナノ

瞬きも忘れてしまう







今日はウエディングドレスのカタログ撮影。撮影は順調に進み、9着目に突入。髪型も化粧もドレスに合うように変えていくので少しだけ疲れも出てきた。でもこんなにたくさんのウエディングドレスを着れる機会なんて滅多にないから、貴重な体験




「よし、このショットが終わったら休憩。それで次からペアでの撮影に入るから」

「ん?ペア?そんなのあったっけ?」

「そう、もうすぐ相手の方が来るんだけど…」





そんな話あったっけ?打ち合わせの時、極度の睡魔に襲われて半開きの目を必死で開けるので精一杯だったから、聞き逃してたのかな?ペアってことは、新郎新婦って設定なんだろうね。相手の方は誰だろう…





9着目の撮影が終わり休憩に入る。あー、めっちゃ眠たい…ドレスを脱いで用意されたお弁当を食べる。お腹いっぱいになって更に強烈な眠気が私を襲う





「相手の方が遅れてるそうで、先にスタジオ入りして待ってることになったから次のドレス着て?」

「えーもう休憩終わり?たったの15分じゃない。休んだ気がしない」

「文句言わないのー、今日のスケジュールは分刻みなんだから」





文句を言いながら白の素敵なドレスに身を包み、ヘアセットと化粧をする。準備を整えてスタジオ入りして椅子に座って相手の方を待つ。そういえば誰なんだっけ?聞くの忘れちゃったけど、貴重な時間を無駄にしたくないから少し寝よう。テーブルに顔を伏せて目を瞑れば、意識を手放すの簡単ですぐに深い眠りについた





トントン、と肩を叩かれて意識は覚めたけどまだ起きたくない…まだ眠ってるふりをして無視をしたらカメラのシャッター音が聞こえて目を開けた





「おい、怜。いつまで寝てんの?」

「………え?隆二!?」




目を開ければ、タキシード姿で立っている隆二がいた。相手の人はモデルの人か俳優さんかと思ったけど、まさかのまさかで隆二だった。驚きのあまり、開いた口が塞がらない状態の私を見て、ニコッと笑って乱れた私の前髪を直してくれた




「どうして隆二なの!?」

「それは俺が聞きたいよ、こんな仕事初めてだし…」

「だろうね…もうめちゃめちゃビックリした」

「俺もビックリした。似合ってるじゃん、そのドレス」

「ありがとう。隆二こそタキシード姿、意外と似合ってる」

「おい、意外とってなんだよ」




何度か一緒にご飯を食べに行ってから、とても仲良くなって今では私の数少ない大切な人の一人になった隆二。性格っていうか、波長がとても合うから一緒にいてすごく楽だし、最初こそ私の方が芸能界では先輩だったから隆二が気を使っていたけど、今ではもう私のことをなんだと思ってるのか知らないけど、結構生意気になった様子




「よくドレス着ながら寝れるよな、俺だったら無理」

「仕方ないでしょー?眠かったんだから。それに来るの遅いし」

「前の仕事が押してたの!それこそ仕方ないだろ?」

「ていうか、私と一緒の仕事だって分かってたなら一言連絡くれても良くない!?本当にビックリしたんだから」

「知ってると思ってたから連絡しなかったんだよ、ていうかお前だって、なんで俺だって知らなかったわけ!?打ち合わせちゃんと聞いてた!?」

「うっ…それは…」

「おーい、そこの2人ー!仲が良いのは分かったから、早速撮影入るからこっちに来てー!」




最近はこんなくだらない喧嘩ばっかりするけど、隆二はすぐに私の手を取って、歩きやすいようにエスコートしてくれた。本当、こういう所がずるいって思ってしまう。こんなことされたら誰だってトキメキを感じてしまうし、こういうさりげない優しさに弱い女の子だってたくさんいる




私もぶっちゃけそのうちの一人で、隆二に対してドキッとしてしまうことが最近多い。でもそれ以上の気持ちにはならないのは、心の中で何か引っかかるものがあるからで…




「新郎新婦なんだから、遠慮なく甘えてきてもいいからな」

「何よ、かなり緊張してるくせに」

「うるせーよ」

「でも…まぁ。良い写真が撮れるといいね」

「…そうだね」




相手が隆二だからかな?手を繋いだり腰に手を当てられても全く嫌じゃないし、とてもやりやすくて、仕上がった写真を見て監督も絶賛してくれてとても嬉しかった。写真の中に写る私たちはとても幸せそうだった




「最初、EXILEのTAKAHIRO君にしようか迷ったんだけどね〜。2人普通に仲が良いから新鮮さが出ないかな〜と思って、今市君にしたんだよ」

「へぇ〜、そうだったんですね」

「その選択、正解だったようだ。お疲れ様、出来上がりを楽しみにしててね」

「はい。お疲れ様でした」




最初は敬浩が相手役だったんだ…もし敬浩と一緒に撮ったらどういう感じになったのかな〜。そんなことを考えていたら、後ろから頭を小突かれて振り返るとペットボトルのお水を持った隆二が隣にやってきた





「もし敬浩君だったらどうなってたのかな〜って思ってただろ?」

「ちょっと、変なこと言わないでよ」

「図星だろ?ま〜いいけどさ。結果的に俺でよかったって言われて俺もホッとしてるし」





そりゃそうだよね。隆二も、やっぱり敬浩にしておけばよかったなんて言われたらショックだろうし。渡されたお水を飲んで一息入れる。これから着替えて私は次の仕事。最近はモデルの仕事が多く回ってくるようになったから忙しい毎日





「そういえば、なんで敬浩君とあんなに仲良くなったの?」

「デビューしてすぐに番組で共演してからかな?ガッチガチな私に敬浩が声をかけてくれたのがきっかけ」

「ふーん、じゃあ将吉君は?」

「同じ北海道出身ってことで敬浩が紹介してくれたの。共通点がある方が仲良くなれるんじゃないかってね」




極度の人見知りをどうにかしようと敬浩が気を使ってくれて、将吉君を紹介してくれたんだよね。案の定、北海道の話で盛り上がって、将吉君の明るい性格もあってかすぐに仲良くなれて、本当に良かったと思ってる





「じゃー青柳君ともすぐに仲良くなれそうだね」

「青柳君?」

「そうそう、劇団EXILEの人で北海道出身だよ?それに怜と同じ札幌出身。最近ドラマとか映画にかなり出てるし」

「へぇ〜、そうなんだ!今度紹介してよ!もっと友達増やしたいし!」

「えー…どうしようかな〜」

「何よ、意地悪ね。いいじゃない、減るもんじゃないんだから」

「今度な、今度」




最近いろんな人と関わりが持てていることがすごく嬉しくて、このまま人見知りの性格を打破できるんじゃないかってくらい、得体の知れない自信に満ち溢れている。それも全て敬浩のお陰なのかもしれない。持つべきものは親友だ





「じゃ、また今度飲みに行こうね」

「おう、仕事頑張って」

「ありがとう。お疲れ様」

「お疲れ〜」




今日はまた一歩、隆二と仲良くなれて嬉しかったな。早くカタログの出来上がりが楽しみで仕方がない。よし、次の仕事も頑張ろう





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