ロイヤルミルクティ | ナノ

鍵がなければ開かない宝箱







朝の収録が終わって事務所に着いたら、1人の女の子が入り口の前でウロウロしていた。綺麗に染まった長い茶髪で、スタイルが抜群のその女の子は




「あれ?怜ちゃん?」

「あっ、眞木さん!おはようございます!」




俺に気づいたや否や、高いヒールを履いているのに小走りで走って来るその姿は、こんなこと直接敬浩には絶対に言えないけど、本当に可愛くて抱きしめたくなる位愛らしくて、魅力のある女性だと思う




「どうしたの?こんな所で」

「いや〜…あの、今日って敬浩は…事務所に来てます?」

「あぁ、来てるよ?今日は打ち合わせだから…多分もういるんじゃないかな?こんなとこじゃあれだから、中入ろうよ」

「いえいえ!いいんです!!そんな対した用事じゃないので…」

「用事って?」

「あ〜…こんなこと眞木さんに頼むのは失礼かもしれないんですけど…いいですか?」

「全然いいよ!何?」




ゴソゴソと鞄の中を漁って出てきたのは小さな紙袋だった。お弁当でも作ったのかな?え、やっと2人結ばれたの!?でも最近敬浩の奴、元気ないから違うよな〜…と思いながら中身をチラッと覗くとDVDが入っていた




「こないだ借りてたDVDを友達と観るから早く返せって言われて…そんなこと言われたら早く返さないとって思って」

「それでわざわざ事務所に?」

「いえ、たまたま近くのスタジオで仕事がありまして…電話しても繋がらなかったので、どうしようかと思ってました」




俺的にどうせ早く返せって、会うための口実だと思ったけど余計なことはできないから素直に預かることに。宜しくお願いしますと言って仕事に向かった怜ちゃんを見送って事務所に入る




「おはよう篤志、敬浩知らない?」

「眞木さん、おはようございます。敬浩なら今ボイトレやってますよ。じっとしていられないから時間になったら戻ってきますって言ってましたけど…」

「そっか、ありがと」




お節介かもしれないけど、元気がない、じっとしていられない理由を聞いてやるか。言った方が楽になることが多いと思うし、それに若い子の恋愛には少し興味があるしね〜うん、若いっていいな




「よっ敬浩、おはよう。朝から頑張ってるな」

「おはようございます!どうしたんですか?」

「さっき頼み事されちゃって、その役目を果たしに来た」

「え?頼み事?」

「はい、これ」



怜ちゃんから渡された紙袋の中身を確認して、すぐに誰からなのか分かった様子で、目を丸くして俺の顔を見る




「これって、怜に貸してたDVD…」

「そう、さっき事務所の前に来ててたまたま会ってさ、電話繋がらないから渡してくれって頼まれた」




慌てて鞄から携帯を出して確認してる姿からして、やっぱり早く返せは会うための口実だったか…こんなめんどくさいことしなくてもいつも普通に会ってたくせに、どうしたもんかな〜




「どうせ、早く返せって会うための口実だろ?どうしたんだよ、らしくないじゃん」

「眞木さん…俺、なんかもう良くわかんないっす」




珍しく素直に弱音を吐く敬浩を見るのは久しぶりかもしれない。相当参ってるのか…2人の喧嘩は別に珍しいことじゃないから、きっと敬浩の気持ちの問題だろう




「もう怜との付き合いは長いのに、今更こんな気持ちになるのは可笑しいと思うんですけど…」

「何があった?」

「俺、多分嫉妬してるんですよ。最近、隆二と物凄く仲良くなってることに」




そう言えば将吉がなんか言ってたな…あの極度の人見知りの怜ちゃんが珍しい!って。前から思ってたけど、この2人がずっと親友同士をやり続けていることを疑問に思っていた




敬浩なんか、こんな風に悩むくらいなら思い切って打ち明けてみればいいものの…2人の間に何かあったんだろうか




「なぁ、前から思ってたんだけど、どうして怜ちゃんと親友続けてんの?好きなんだろ?親友以上の関係になりたいとか思わないの?」

「…そう思うには遅すぎたんです。俺、一回怜のことフったことあるんですよね」

「え?いつ?」

「もうかなり前です…出会った頃くらい。あの時は、俺もEXILEに加入してそんなに経ってなくて、悩んでた時期だったんですよ…」




本当は思い出したくないし思い出させたくない、敬浩がEXILEに加入した頃…賛否両論、色々な意見が飛び交ったあの頃。酷い言葉を浴びせられ、なかなか認められなかった頃は、思い出すだけで胸が痛む




「怜はめちゃくちゃ支えてくれて、甘えてしまおうと思ったくらい俺の支えでした」

「まぁそうだよな。あの頃は本当に辛かったと思うし、そう思って当たり前だと思うよ」

「これからもずっと近くで支えたいって言われたときは、マジで嬉しかったんですけど…正直恋愛なんてしてる場合じゃなかったんです」




とにかく認めてもらいたい、その一心で血の滲むような努力を続けて来た裏で、怜ちゃんとそんなことがあったなんて知らなかった




言われなくても分かる、敬浩の決断。きっと俺も敬浩の立場だったら同じ答えを出してたと思うよ




「怜とは、ずっと仲の良い友達でいたい。そう言ったときのあいつの顔は、今でも忘れられません」




夢を叶えただけじゃ終われない世界。これからは夢を希望を与えていかなければいけない。でも、敬浩は十分頑張ったじゃないか。そろそろ自分の幸せを求めたって良いと思う




「その言葉が、きっと怜ちゃんの心の中で生き続けているんだろうね」

「だから、今更俺が好きだなんて言えないです。本当に辛いときに支えてくれたのに…自分が傷ついていたはずなのに、更に大切な人を傷つけた…」




2人には大きな溝があって、簡単には修復できなさそう。でも、いつまでも過去を引きずっていたって何も変わらない。近くに居すぎて気づいてないんじゃないか?




「傷つけたと思ってるかもしれないけど、一つ言えるのは怜ちゃんだって恋をするってこと。それは敬浩かもしれないし、違う人かもしれない」




一歩踏み出せよ、また後悔してしまう前に




「いつまでも怜ちゃんが側にいてくれるとは限らないよ?」




「親友」っていう関係が邪魔をする大きな壁を、どちらかが壊さないと何も変わらないから







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