ロイヤルミルクティ | ナノ

一歩だけ先行くキミに






初対面の人と、こんなに早く打ち解けられたのは初めてかもしれない。最初はやっぱり私が遠慮がちだったけど、同い年っていうのもあってすぐに自然と話せるようになった。きっと今市君の明るい性格がそうさせているのかもしれないけど





「俺、本当に広瀬さんのファンだったんですよ!映画もドラマも逃さず見てます!だから一度でいいからお会いしてみたくて」

「そうなんですか?いや〜普通に嬉しいです」

「ていうか、もう打ち解けたんだから敬語やめたら?」

「さすが将吉君、私その言葉待ってたの」

「え、なんで言えないの」

「馴れ馴れしいかなって思って…」





そう言ったら今市君に笑われたけど、これをきっかけにもっと仲良くなれた気がする。一方、隣に座る敬浩は随分と大人しい。なんだ、珍しく酔っぱらったのかな?さほど気にしてなかったけど、こうも大人しいとなんだか心配になる





楽しかった時間もあっという間に過ぎて解散することに。連絡先を交換してまた飲みに行こうと約束もして、今市君と将吉君とは別れた





「なんか最後の方から元気ないね、珍しく酔っぱらったの?」

「いや、なんだろう。俺ももう年かな?めっちゃ眠たい」

「疲れてるんじゃない?じゃー私タクシーで帰るね」

「タクシー?いつも歩いて帰るじゃん」

「歩いて帰るって言ったら、送るって言うでしょ?」

「…送るつもりだったけど」

「疲れてるんだから早く帰って寝て。じゃ、また今度ね」





タイミング良くタクシーを見かけたので、捕まえて乗り込む。すると敬浩も隣に無理やり乗り込んできて、何事もないかのような顔で座ってきた





「どういうつもり?私の心優しい気遣いを無駄にするつもりなの?」

「俺が今まで飲んだ後、家まで送らなかった日なんてあったか?」

「…どうだったかな〜」

「この恩知らずめ、いいからさっさと住所言えよ」

「ったく…」




敬浩はいつまで経っても私のことを子ども扱いする。飲んで酔った帰りに変なことしないか心配だからって言うけど、もういい大人だしちゃんとお酒の飲み方も分かってる。実際今まで一回もお酒で敬浩に迷惑かけたことなんて一度もない




特に何も話さず携帯をいじってる敬浩の横顔は、とても綺麗に整っていて…悔しいけどいつ見てもかっこいいと思ってしまう。噂とかは信じないタイプだけど、こんな外見だからたくさんの熱愛報道や交際の噂が出る中で、何が本当なのかは知らないけど、私とはそんな噂にはならないのが不思議




「何見惚れてんの」

「はぁ。…本当に敬浩は、何考えてるか分かんないよ」




このまま仲良しな関係も悪くないと思うけど、どうなんだろう。そんなことを考えていたら車の明かりが付いて、外を見ると家の前だった。お金を支払おうと財布を出そうとしたら、さっと敬浩がお金を出してくれた





「ちょっとやめてよ、自分で払うよ」

「いいから。女に金は出させない主義」

「今までそういうのなかったじゃない。その気遣いは他の人とのデートだけにして。私にはいらない」

「まぁまぁ、ほらさっさと降りるぞ」




本当に自分勝手、人の気持ちも知らないで…タクシーを降りるとき運転手のおじさんに「お言葉に甘えなさい?お嬢ちゃん」なんて言われる始末。やっぱり変だ、酔ったら優しくなるの?そんなはずない




「どうせこれを貸しにして、倍返しにしようなんて企んでるんじゃないの?」

「そんなことしないよ、運転手のおじさんが言ってたように、お言葉に甘えなさい?お嬢〜ちゃん?」

「…むかつく」

「ははっ、ほら風邪ひくから早く家入れよ」

「今日の敬浩、なんか変。やっぱり酔っぱらってるでしょ?」

「う〜ん…まぁそういう事にしといて」

「本当に意味分かんない…じゃぁ、おやすみ」

「おう、おやすみ」




滅多にこんなことしないのに、笑顔で私の頭をポンッと優しく叩いて帰って行った敬浩。そういえば今市君がお店に来る前にも同じようなことされたよな…




酔ってるわけじゃ…ない?




はぁ、益々意味が分からない。でも悪い気はしない。付き合いは長い方だと思うけど、たまにはこういう日もあっていいのかもしれない、そう思うことにして敬浩の後姿が見えなくなるまでずっと背中を見つめていた




もうこんな珍しい日はこない、だから最後までこの日を目に焼き付けておこう…そんな心境で今日という日が終わった





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