ロイヤルミルクティ | ナノ

さよならより愛してるの方がくるしい








あと2時間後には仕事に行かないといけないのに体が動かない。先に事務所に寄ってから行こうと臣に誘われたけど断ってしまった。






極力何も考えたくない。会いたくない…あの人には…その気持ちが俺の心を狭くしている。






どうして人を好きになるのは簡単なのに、忘れるのはこんなに難しいんだろうか。忘れようとすればするほど、まだチャンスはあるんじゃないか?本当に忘れていいのか?と思ってしまう。






ピンポーン…家のインターホンが鳴る。最初は居留守を使ったが、何度も鳴るのでイライラして画面を見たらそこには臣がいた。先に事務所に行っているはずなのに…






「お前、まだ寝起きかよ。そろそろ準備しないとダメなんじゃないの?」

「…どうした?事務所に行ってたんじゃないの?」

「そりゃ、相方が悩んでたら飛んでいくに決まってんじゃん」






俺は、臣に悩みがあるなんて言っていない。もちろんこの淡い恋心についても一度も言ったことがない。なのに、こうして会いに来てくれたことが嬉しかった。






何も考えたくなかったけど、臣にならなんでも言えるんじゃないかと思ったら自然と弱音がボロボロと口から溢れ出ていた。





「初めから分かってたんだ。怜が敬浩君の事好きなんだってこと」

「え、そうなの?」

「ウエディングドレスのカタログ撮影したときも、最初は俺じゃなくて敬浩君だったって知った時のあいつの顔…今でも忘れられないくらいさ」






あの時から、なんとかして振り向かせてやろうと思っていた。






「でも、もう無理だって思った瞬間があってさ…」

「何?」

「青柳君とのドラマ。キスシーン、凄かったじゃん?あれさ、本当はあんなに激しいキスじゃなかったんだ」






気になって青柳君に聞いたことがあった。怜とのキスシーンってどんな感じですか?って。そしたら「台本にはただ触れるだけのキスって書いてあったよ」って言われた。






でも実際のキスシーンはまるで違うものだった。きっと、演じてる役に自分を重ねたのかなって思った。だからあんなに感情が入っていたんじゃないかって。






幼馴染の男のことがずっと好きだったけど打ち明けられなかった主人公の気持ち…まるで親友だった敬浩君に気持ちを打ち明けられない自分を重ねているように…






「俺は、正直に言うけど…敬浩君より隆二と上手くいってほしいって思うよ。それは相方だからね」

「臣…」

「でもさ、出会うのが遅かったね。もうあの二人の間には入れないと思うよ」







もう無理だと言ってほしかった。こうもストレートに言ってほしい言葉を言えるのは、お前しかいないよ。






「だからさ、もし敬浩君が怜のことを泣かせたらいつでも奪う準備はできてるぞ!くらいの気持ちでいいんじゃないかな?」

「…だよな。俺、今すぐに忘れたいって気持ちが先走ってた」

「そんな簡単に忘れようと思って忘れられるくらいの気持ちじゃないだろ?きっと来るさ。二人の幸せを願える日がさ」

「当分無理だけど…」

「はっはっは!辛いだろうけど頑張れ!」






泣かせたら許さない。幸せにしないと許さない。俺が幸せにできない分、敬浩君には怜が心から幸せだ!って言えるくらい幸せにしてもらいたい。






じゃないと、俺が次に進めないから。






「臣……ありがとな。助かったよ」

「何言ってんだよ。隆二が元気ないと健ちゃんうるさいから…」

「ははは、健ちゃんしつこいからな〜」






この恋が実らないからって、俺はお前を見捨てたりしないから。






怜、幸せになれよ。






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