ロイヤルミルクティ | ナノ

あなたの心を覗かせて





ドラマが順調に進んで行っている中、息抜きにランチでもどうですか?と青柳さんに誘われて、スタジオ近くのパスタ屋さんにやってきた。前々から気になっていたお店だったので少し興奮してしまう。




「ここ気になってたんですよね。外観がオシャレだし」

「あ、僕もです。雰囲気がとっても素敵ですよね」

「そうそう!店内もすっごく落ち着きますね〜」




毎日のように一緒になるからだろうか…最初はぎこちなかったものの、だんだんと素の自分を出せていて、それはきっと青柳さんも一緒でお互いがお互いの話をたくさんするようになった。




でも今回のランチのお誘いは、なんとなくだけど今日の撮影の山場である、キスシーンの前だから…だと思っている。




「青柳さん、もしかして…気を使ってくれてます?」

「え?何のことですか?」

「この後のキスシーン。私が緊張しないように、こうやって二人で話しができる時間を作ってくれたんですよね?」




もちろんキスシーンは初めてではない。むしろ自分で言うのもアレだが、多くこなしてきたつもりだ。でも、やっぱり今回のは全く意味が違う。仲良くさせてもらっている知り合いの方がお相手だと、やっぱり緊張するものだ。




それに、本来ならば青柳さんはまだ撮影の時間ではない。確か今日はキスシーンのみだったはず。なのにどうしてスタジオにもう来ているのか…理由はひとつしかないだろう。




「んー、どっちかというと広瀬さんに気を使って…というよりは、僕の緊張を和らげたいって感じですよ」

「やっぱり青柳さんも緊張なさってるんですね…」

「僕も広瀬さんも初めてじゃないのに…何でですかね?敬浩君のせいかな?」

「ん…?敬浩?」

「敬浩君、怒りそうだし…ていうか、見てくれないと思うけど…」





前々から思っていたけど、将吉君も青柳さんも何かあるたびに敬浩の名前を出す。まぁ、親友だし?そうなるのも分かるけど…




いい加減、敬浩に気を使って私との関わり方を考えられるのも困る。





「いいんですよ!敬浩なんて!気にしないで、役に集中しましょうね!」

「まぁ、そうですよね。ドラマのことを第一に考えましょうか」





私も、もっともっと女優として成長したい。有難いことに、このドラマの視聴率も良いって聞いたし、もっと良い作品にしていきたい。青柳さんに気を使われてちゃダメだ。





敬浩にも驚いてもらいたい。私の成長を…





そしてあっという間にキスシーンの撮影。私が青柳さん演じる幼馴染にずっと好きだったと打ち明け、私からキスをするシーン。重たい雰囲気を出しつつ、役に入り込んでいく。





幼馴染の彼の事がずっと好きだったヒロインの気持ちを考えたら、とても胸が苦しくなる。ずっと好きだったのに、今の関係が壊れてしまうのが嫌で打ち明けられなかった本当の気持ち…





どうしても他人事には思えないこの感情は、どこからくるものだろう…





カメラが回る。言わないといけないセリフがもう喉元まできている。強く抱きしめた後に涙を流す設定なはずなのに、もう既に私は泣いてしまっていた。






「私の事、幼馴染だって思ってると思うけど、私は違うの!」

「おい…何泣いてんだよ…意味わかんねぇよ」

「もう辛いよ…好きって気持ちが抑えられないの…!!」






目の前にいるのは青柳さん演じる幼馴染。ずっと秘めていた想いを伝えられ、驚きを隠せない表情の青柳さん目がけて飛び込む。






「ごめん…好きなの…前からずっと…」





この幼馴染の二人のように。思い切って気持ちを伝えれば何かが変わることもあるのかもしれない。それはお話の中だから?作られた物語だから?






遠い記憶が蘇る。敬浩にずっと友達でいたいと言われたあの時のことを、今までずっと鵜呑みにしてきた。





ただ、ノーマルなキスをするだけのシーン。台本にはない、この激しいキスはずっと思い描いてきたあなたとの想像の世界のものだ。





激しいキスが終わりしばらく抱き合っていたら、遠いところから監督の絶賛の声が聞こえる。もうすでにカットがかかっているのに離そうとしない青柳さんが耳元でこういった。









____ 僕じゃ、ダメですか?








そんなセリフは私の持っている台本には載っていないものでした…





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