小説 | ナノ

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最初は隆二君と










隆二君とは私がカメラに
背中を向けているから
まず隆二君が私の髪を
耳にかけて
そこで私の顔が
初めて映る














そこから















今にも泣き出しそうな
顔をした隆二君が
ゆっくりと近づいてくる

















今まで見たことのない
隆二君の顔に
不覚にもドキッとした



















唇が当たるか当たらないか
という所でしばらく動かず
















監「はいカットー!
二人ともお似合いだねー」

「そんなことはいいんですよ
上手く撮れました?」

監「最高!絵になるわー」


















上手く撮れたけど
角度を変えて何度か撮り直し





















そして























監「じゃぁ次登坂君とね」




















心臓の音がうるさい…
だめ、変に意識したら
良いものが撮れない
これは仕事…仕事



臣君も別にいたって普通



大丈夫、上手くやれる




















臣君とは角度的に
私が自分で髪の毛を
耳にかけて
下から臣君が
キスをするシーン



















臣君の頭で
私の顔が隠れないように
有念にカメラテストをする


















直「なんか…父親の気分なんだけど」

岩「え?父親ですか?」

直「娘をお嫁にやる気分…」

隆「なんで俺がこんなに
緊張してるんだろう」




















失敗は許されない
お互い特に言葉を
発するわけでもなく

















監「よーい、スタート!」






























臣君が私を見つめる
だから私はそっと
髪を耳にかけた

























ぐっと下から近づく
見慣れた好きな人の顔も
別人のように見えて
愛しい



























私も求めるように
顔を近づけた


































キスをする































寸前で






































ふわっ



































頭をぐっと抑えられた
衝動で髪の毛が
耳から落ちる










































その瞬間
あぁ撮り直しか
と思った





































監「……カットっ!!
凄い…!今の凄くいいね!
やろうと思って
やれるものじゃないよ…!」











































何…?




































多分、何が起こったかなんて
私たちにしか
分からないんだろうね













































唇が熱いから














































キスしないなんて


















































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