彼女がボクから離れていこうとするから、彼女がボクから離れられないように両足を縛りました。そうしたら彼女は暴れだします。だから暴れないように両手を縛りました。解けないように、力を込めてぎゅうぎゅうと。彼女は声高に言います。いたいとか、やめてとか、どうしてとか。だから、ボクは説明しました。ボクがキミのことを愛してるからだよ。彼女は嘘だ、と叫びます。嘘だ嘘だ嘘だ。嘘、じゃない。どうして信じてくれないんだろう。耳につく彼女からの否定の言葉。ボクを拒絶する言葉の羅列。鬱陶しい。煩わしい。いわないで。それ以上、否定するな。彼女を叩きました。それでも彼女からうわごとのようにでてくる言葉が耳から離れない。叩いて叩いて叩いて叩いて叩いて叩いて叩いて叩いて叩いて叩いて叩いて叩いて叩いて、


「ねえ、いち。返事してよ」


どうして、返事してくれないの。
土で造られた人形のように冷たくなってしまった彼女。ボクに向けられた顔も冷たいもので、寒気がした。顔はボクの方に向いていたけど、目はいつまでたってもボクを映さない。そうだ。しゃべれないなら、ボクを見ないのなら、土に埋めてしまおう。そしてボクも一緒に還ればいい。そうすればずっと二人でいられるのかなー。



理想郷の夜明け/100312
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