マイデスクの上にはやたら丁寧な字で゛ラムダのもとへ行ってください゛そうかかれた紙がはられていた。誰が書いたかなんて簡単にわかる。アポロ様だ。またか。張り紙をひっぺがし、ぐしゃりと丸めてゴミ箱に全力投球しながら、心のなかで叫んだ。なんだか最近アポロ様に避けられているような気がする。この間ヤドンのしっぽ狩りしているランス様の応援に行ったときだって、まさに今みたいな伝達の仕方だった。その前だってこんな感じだったし、その前も、そのまた前も直接会うことなく、ずっと紙切れ1枚のやりとりだ。しかも一方的な。考えてみたらこの1ヶ月顔すら合わせてないじゃないか。わたしはアポロ様直属の部下で(自称)右腕だぞ。こんなことがあっていいのか。いやよくない!だって(自称)右腕だよ!なのになにこの扱い!でもここまでされる心当たりなんか丸でないし。どうしたとゆうんですかアポロ様ああ!


「あー、アイツも忙しいんだって」


多分。
ラムダ様は誰か知らない人の顔を張りつけて、知らない人の声で気だるそうに言った。こいつ聞く気なんか丸でねえ。


「もっと真剣に聞いてくださいよ!」
「あのねえ、そうはいっても穣ちゃんよォ、俺はアイツじゃないから考えたってわかるわけないの」


この意味おわかり?やっぱり知らない人のままいうラムダ様に、わたしはどこかの野生のゴースにでも化かされたような錯覚になったったから、むっとする。ラムダ様は呆れたのか、すでにデスクに向かってお仕事モードだ。それでもぶーたれ続けるわたしにラムダ様は「そんなにゆうんなら本人に聞けばいいだろ」と、さらりとゆうけれど、(自称)右腕ながら所詮はしたっぱなわたしがそんな恐れ多いことできるわけない。そう伝えればそんなこったないだろうに、そんな感じのことをぼやいて、今度こそ本当にため息をついた。


「てゆうか穣ちゃんは何しにきたの」
「えっ、お手伝いですけど…?」
「手伝いっつってもここ結構人足りてんだけど」
「は」
「だから帰ってもいいよ」
「はっ?」


はあああああああああああ?!
何ですかそれ。どこのギャグですか笑えないんですけどっ!ちょっとちょっとちょっと、


「アポロ様あああああっ」


たまらずアポロ様の仕事場のドアを強引に開けて飛び込んだら、アポロ様のヘルガーがビクンと跳ねたのが目の端っこに映った。けどそんなヘルガーに反比例してるみたいにアポロ様は全くの無反応でさらにわたしのボルテージは上がる。「入っていいと誰が許可しました?」わたしを見ずに、書類に目を通しながらいう。1ヶ月ぶりの第一声がこれってどうなの?ねえ、どうなの?


「アポロ様!酷いじゃないですか!この(自称)右腕であるわたしをこんなにも遠ざけるなんて!なんですか?もう左遷でもする気ですか?ラムダ様の部下になれってことですか?!せめてアテナ様がいいです!」


アポロ様はヘルガーをモンスターボールに戻して、書類から目を離し、やっとわたしを見た。そのときの目があまりにもギラギラしていたから、わたしは言葉に詰まってしまう。無言のまま立ち上がり、こちらへずんずん近づいてくる。元々からそんなにないはずの距離だったけど、どうにもスローモーションに感じた。だけど近づいてしまえば、もう距離という距離はなくて果てしなく0に近い。そんな至近距離であっても、アポロ様の眼差しが緩むことはなくて、ギャラドスにでも睨まれたような恐怖心を植え付けられた。もう何も言わなくなってしまったわたしにアポロ様は覚悟はできていますか、と問い詰める。覚悟?ちんぷんかんぷん。わたしがハテナマークを浮かべても構うことなくアポロ様は続けた。


「せっかく避けててあげたのに。もう、お前に拒否権なんてありませんよ」


そうしていきなり首元めがけて噛み付いた。



お好きにどうぞ/100719
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