「何かあった」
「え」
「何かあったでしょう」
彼女の発言は疑問ではなく確信だった。
「どうして」
「だって、なんだか楽しそうだもの」
楽しそう、というより嬉しそうかもね。そう言ったのは小学校からずっと一緒のクラスになってしまっている友人だった。これを俗に腐れ縁というのだろう。
今、私は学校にいた。私はニートでなければフリーターでもない。伊賀崎くんと同じく、学生という職業をもっていた。そのことを今朝、朝食を摂っているときに伊賀崎くんに伝えたら驚かれた。純子さんが学校…?失礼な話だ。
「フランダースの犬は見た?」
「え、嗚呼、あれ。おもしろかったよ」
「見てないのね」
「見たには見た」
「また屁理屈」
じゃあ、何かしらね。と彼女はいう。何?何が。そういえば彼女は意味深に微笑して私を見る。純子がそんなに嬉しそうにしている理由よ。そういった彼女のほうがなんだか嬉しそうだった。フランダースの犬じゃないなら何かしら。どうやら私は彼女にあのアニメで嬉しくなる程度の女だと思われているらしい。
「ペットでも飼い始めた、とか」
「ペット、ペットね。うん、そうなのかも」
当たらずしも遠からず。