どの時代から来たのか、そう聞いても伊賀崎くんは首を傾げるばかりだった。江戸時代とか鎌倉時代とか、そういうのは現在の人が勝手につけた名前だということをここで初めて知ることになる。
「戦はないんですか」
「ないよ」
「未来は、平和になるんですね」
「平和。うん、でも、他の国では戦争してるところもあるよ」
「他の国?」
「ええと、…渡来人?」
「南蛮、ですか?」
「ああ、それだ。南蛮だ」
伊賀崎くんは感嘆したようで、未来はすごいですねといった。箱に人がはいっていたり、火が出たり、遠くの人と会話できたり、明かりがついたり。伊賀崎くんにとっては本当にすごいことなのだろう。それでも伊賀崎くんの飲み込みの速さは速い。テレビもコンロも電話も蛍光灯もすぐに理解してくれた。これも忍者ゆえなのかもしれない。
「ねえ、ねえ伊賀崎くん。伊賀崎くんが居たところはどんなところだったの」
「忍術学園のことですか」
「そうですよ」
「忍術学園は忍者に成るための学校です」
「学校…」
「変な人たちがいっぱい居ます」
「伊賀崎くんも?」
「いえ、……はい。多分」
伊賀崎くんは自分が3年生であること、生物委員会に入っていること、毒虫が好きなこと、ほかいろいろ教えてくれた。それを真剣に聞いていた私に自分で驚く。どうやら私は私の知らないところで、珍しく興味を抱いているようですよ。