伊賀崎くんは虫籠を握り締めて中を見つめていた。からっぽ。中身はからっぽなのに。何が入っていたの。聞くと伊賀崎くんは答える。虫が、毒虫が入ってました。そうか、どくむしか。
「捕まえなきゃ、いけないんです」
「どくむしを」
「毒虫を。捕まえなきゃ、竹谷先輩や生物委員のみんなが怒られるんです」
「たけや、せんぱい。せいぶついいん…」
「僕の、仲間、です」
未来にはどんな毒虫がいるんですか。そう聞いた伊賀崎くんの目は少し輝いたように見えた。どんな。どくむし。どんなって。はて。
「わかんない、や」
「そう、ですか」
私が虫博士だったらよかったのにね。