伊賀崎くんを知らん顔して外に放り出すわけにはいかなかった。なので私の家に住まわすことにした。今はおばあちゃんと2人で住んでいるから、おばあちゃんに許可をとるだけでいい。私の友達といえば、おばあちゃんも断ることはないだろう。それに無駄に広い家だし問題はなさそうだ。そんな訳で我家にひとり住人が増えた。
「なんか、変」
「これがフツーだから」
「ふうん。…やっぱり、変」
忍者っぽい服装をさせている訳にもいかないので、私の服を貸す。伊賀崎くんは背丈も体格も私とあまりかわらないから、すんなりと私の服を着てしまった。伊賀崎くんは着心地があまり気に入らなかったのか、あまりいい反応はしない。
「そういえば」
「?」
「僕は貴女の名前を知らない」
「ああ、」
「教えて、くれませんか」
純子。純子だよ。伊賀崎くんが復唱する。純子、さん。
「お別れのときまでよろしくね」
どうしてか、伊賀崎くんは変な顔をした。