虫籠をもった男。名を伊賀崎孫兵というらしかった。


「孫兵くん?」

「伊賀崎です」

「伊賀崎くん」

「はい」


伊賀崎孫兵という人間はなんだかつめたそうだった。温度的にも、態度的にも。突き刺さる視線が痛い。
どこから来たのかと問うと、伊賀崎くんはにんじゅつがくえんといった。にんじゅつがくえん。それは一体どこだろう。今度は伊賀崎くんが問う。ここはどこだと。私の家であることを伝えると、信じられないみたいな顔をされた。


「僕は忍術学園で逃げてしまった毒虫を捕まえる最中でした」

「へえ、どくむしを」

「ええ。毒虫を」

「どうして、ここへ?」

「わからない」


伊賀崎くんから出てくる言葉は、私にはわからないことだらけだった。初めてドラえもんと出会ったのび太の気持ちならなんとなくわかる気がした。どうせなら会うなら、ドラえもんの方がよかったなあ。
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