どうしても興味が持てない。公園に捨てられた犬とか、あの有名人のスキャンダルとか、空にかかる虹とか、あの子に新しくできた彼氏とか、あの話題の映画とか、テストの点数とか、綺麗に咲いた花とか、あの店の新作のケーキとか。全部全部、どうしても興味が持てない。病気みたい。ある子は私を指差してそういった。そうなのかな。病気なのかな。そう口走ってみても本当はわかっていた。これは病気なんかじゃないんだよ。そんな貴女に興味がないだけだよ。心の中で呟く。その子はそんな私を知らないんだ、きっと。
コロコロと色彩を変えていく液晶画面を見つめていた。画面の中では教会で少年が犬を抱きしめていた。どうやらクライマックスらしい。友人から感動するからと言われて貸してくれたDVDだったが、ぼーっと見ていたせいか内容すらあまり覚えていなかった。もう一回見るべきなのだろうか。借りておいて内容も知らないのは問題だろう。だけど、どうももう一回見るという余力は残っていなかった。また今度にしよう。そう決めて、テレビの電源を切った。その時だった。耳鳴りがした。頭が割れそうなくらいの耳鳴り。うるさい、うるさい。
「…だれ」
耳鳴りが治まっていくときのことだ。私じゃない、誰かの声が響いた。
虫籠をもった男がひとり、私の前にいた。
「あなたはだれ」
それはこっちの台詞だ。