呼びたくなるような。構ってあげたくなるような。唯一無二の友人の助言を帰路の間頭の中で時計回りにぐるりぐるりと回転させていた。彼女はなかなか難しいことをいったものだ。構ってあげたくなるようなものなんて、一体私の中に存在するのか。少なくともパトラッシュではないことは確かだった。

帰路の間だけでは答えはでなくて、どうしようかと思ったけれど、帰らないわけにはいかない。少し玄関先で迷ってから戸を開ける。ただいまー。返事はない。伊賀崎くんは日課になってしまった猫の散歩にでもいっているのだろうか。変な日課だ。猫の散歩なんて。猫に散歩はいらないんじゃないか、といったら伊賀崎くんは僕がしたいんです、といってそれから毎日散歩をしていた。彼が散歩にいっているというのならその間に夕飯でも作ってしまおう。そう思った矢先、子猫の鳴き声が聞こえた。なんだ、居るのか。部屋を覗き込めば、子猫一匹がひたすら鳴いている。伊賀崎くんの姿はなかった。


「伊賀崎くん?」


問い掛けても返事は返ってこない。きっと、どこかに出かけているのだろう。その場ではそう考えたけれど、何時間待っても伊賀崎くんが帰ってくることはなかった。
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