伊賀崎くんは本当に飲み込みが速い。そう、一人でDVDプレイヤーをさっそうと操作し、全部でディスク9枚からなるフランダースの犬を半分以上見てしまうほど。


「ネロは健気だ」

「はあ」

「人間、みんながネロみたいに綺麗ならいいのに」

「はあ」

「……純子さん」

「はあ」


聞いてますか。そう聞かれてもどうしようもない。大体、私はフランダースの犬を見ていないからネロが何なのかさっぱりわからなかった。これは語弊になる。見たには見たが見ていないが正しい。どちらにせよ、伊賀崎くんがネロが、パトラッシュがと何度熱弁しようが私にはさっぱりなのだ。


「純子さんは生き物に関心がないんですか」

「ないわけでは、ないよ」


嘘をついた。咄嗟の嘘。ないわけではない、のではない。全くといっていいほど関心なんてなかった。捨てられた子犬をみてもどうも思わなかった。嘘は得意だ。誰にも気づかれずに過ごす自信だってある。だけど、なんとなく、このときは伊賀崎くんに見抜かれたような気がした。
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