友人からの誘いで、帰りに書店に立ち入ることになった。駅前にある少しばかり大きめな書店だったけど、私は読書する習慣もないしこれといってほしい漫画や雑誌があるわけでもないので、店内を徘徊するしかなかった。
レジの前に映画化決定!とかかれ、積み上げられた本に目を引かれて覗くものの、活字がずらずら並んでいてやっぱり私は読書なんかできないなあと思い知らされる。できないというよりしたくないだけかもしれないけど。そう思いながら本を元のところに戻して、適当に徘徊する。
「あ」
ふ、と足を止める。図鑑コーナーだった。色とりどりの本がずらりと並んでいる中、一冊の本を手にとる。
「…」
「虫?」
「うわ。びっくりした」
「虫、好きだったっけ」
「んー、まあ」
へーえ、買うの?その質問に、私はまた曖昧な返事をした。買えば。彼女はさらにいう。買うか、買わないか。
「うん、買う」
「あら、珍しい」
「だって買えばっていったし」
「いつもなら私のいう事なんか真に受けないくせに」
「えー」
そうかな。そんなことないよ。そう返しながら、ああ、そうかもしれないって心のはじっこで思った。でもしょうがないでしょ。あんなに目をきらきらさせる伊賀崎くんを思い出しちゃったんだから。