「久しぶりですね、エニグマ」


リョウくんから逃げるべく全速力でファクトリーまで走ってきた私たちを歓迎してくれたのはメイちゃんでも田中でも工場長でもなかった。にこにこと微笑んでいるように見えるけれど全く目が笑っていない。口だけで笑えるなんて、器用なんですね!といつもの私ならそう言うだろうけど、さすがの私にだってわかる。そんなことを言ったら明日の朝日は拝めないってことくらい。


「ご、ゴヨウさん、お久しぶりですね。えへ」


ファクトリーにきてた強い人ってゴヨウさんだったんですね!もう一体なんなんですか。揃いも揃って。仕事はどうしたんです仕事は。なんて死んでも言えない。言ったら殺される!空気だけで殺られる!
今すぐにでも逃げたい気持ちでいっぱいだが、どう考えても逃げられそうにない。こんなところで話すのもなんだから、と工場長はファクトリー内の一室を貸してくれた。今は、私とゴヨウさん、あと何かがあったときにという名目で工場長が側に待機している。


「リョウからつい先ほど連絡をもらいましたよ。どこを捜してもいないと思ったらこんなところにいたんですね」
「ゴヨウさん達がこんなとこにいるのも珍しいですね!」
「私たちのことは今はいいでしょう」
「はいそうですよね!」
「それにしてもバトルフロンティアとは。各地のジムリーダーの方々にも声をかけたというのに、見つからなくて当然だ」
「わあー……それはとんだご迷惑を」
「本当です。我々がどれだけ貴方のために時間を裂いたことか」
「ど、土下座じゃ足りませんか…?」
「さあ、それは彼女次第でしょうね」
「あの」


今まで黙っていた工場長が声をあげた。そういえば、工場長とゴヨウさん、どっちが勝ったんだろう。ふと、カトレアちゃんが淋しそうに笑った顔を思い出して、なんとなくだけど、私は工場長が勝っていたらいいと思った。


「話が全く見えてこないんですけど。貴方とエニグマはどういったご関係なのですか」
「それを貴方に言わなければいけないことだとは思えないのですけどね」
「エニグマはここの従業員です。ボクはこの子の上司ですから蚊帳の外っていうわけにはいけませんし。知る権利があるでしょう」


工場長は私を庇うように、私とゴヨウさんの間に割り込む。このときばかりは工場長がヒーローに見えるよ…!ゴヨウさんはふうん、と何かに関心を持ったみたいな目で見て、そうですか、と呟いた。


「わかりました」
「なら、」
「ですが、それは今ではありません」
「それは、どういう事ですか」
「ネジキくん、でしたね。私たちは四天王です。我々とエニグマはなかなか深い仲でね。今しがた関係者全員に連絡をとらせて頂きました。全員揃ったときに全て説明しましょう。ねえ、エニグマ」


………えっ?今、ゴヨウさんはなんといった?全員に連絡?全員に?気づいたときには私はガタン、と音を立てて立ち上がっていた。工場長は不思議そうに私の名前を呼ぶけれど、そんなこと気にしてる場合じゃない。今すぐ、今すぐ逃げなきゃ。きっと大変なことになる。モンスターボールが手元にあることを確認して、とりあえず外へ行こうとしたけどゴヨウさんに阻まれた。彼は貴方を半年以上も捜していたんですよ、彼の努力を踏みにじる気ですか。そんな感じの事を言われたが勘弁してほしい。私は自分の命のほうが大事だ。それ以上に、今こんなところでヤツと再開してしまったら確実に被害を受けるのは周りのみんなじゃないか。そう思ってゴヨウさんをおもいっきり突き飛ばそうとしたのと同時に爆発音がした。



(「ひぃ……!」)
100205

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