「ち、ちがうよー。人違いだよー。私エニグマじゃないよー」


いやいや。それ無理だろ。
白い目でエニグマを見ている俺とは違って、男はエニグマの腕を掴んだまま切羽詰まっているのか、叫ぶみたいに名前を呼んだ。なんで、こんなところに…!言われた本人は居心地悪そうに目を泳がせながらあーとかえーとかはっきりとしない言葉をはっしている。……うーんイマイチ状況が分からない。そんなとき、男とがっちりと目が合った。というより合ってしまったっていう表現のほうが正しいのかもしれない。噛み付いてくるかのような勢いで睨んでいる。


「貴方、なんなんですか」


いやいやいや。おかしくね。今の状況、間違いなくおかしいだろ。何で俺が親の仇みたいに睨まれてるの?ちょっとエニグマどうにかしろよ、と言おうとしたときにエニグマは男の腕を振り払って俺を盾にするかのように後ろに回り込む。そして、私エニグマじゃないよーと叫んだ。だからそれ無理だって!男の視線を無視しつつ、ちっぽけな俺の脳ミソをフル回転させ今の状況の打開策を考える。ここにいるのが俺じゃなくて田中かヘッドならよかったのにと心底思うよりほかなかったが、そんなことを思ってもしょうがないので、とりあえずエニグマの手をつかんで駆け出す。俺の脳ミソじゃこれくらいしか思いつかないんだから仕方がない。逃げるが勝ちってとっても素敵な言葉だと本気で思った。



(フロンティア内爆走中)
100203

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