「ピロシキさんは何をしにここへおいでで?」
「あ、そうだった。お嬢様、ちょっとエニグマ借りたいんだけど」
「そんなハサミ借りるみたいな」
「いいですよ」
「いいの?!」


なんだか軽く売られたような気分になって切なくなる。てゆうかなんだ。まさか田中にサボってるのがばれたのか!私がサボってても怒りにくるのは田中(ときどき工場長)くらいである。ピロシキめ。お前は田中の手先にでもなったのか、と忌々し気に睨むとピロシキは違うって、そんなんより面白いものが見れるぜといった。そっか。ならいいか。…ん。ちょっと待って。そんなんより面白いものって、なんだー、ピロシキくんは田中に怒られる私をみて面白いって思ってたのかー。そーかそーか。そろそろ泣いてもいいですか。


「とにかく、ファクトリーにいくぞ!」
「なんでー。お茶中なんだけど」
「いーから!もしかしたらヘッドが負けるところ見れるかもしれねえんだから」
「え、」


どうゆう意味?って聞こうとしたけど、口を開く前にピロシキは私の腕を引っ掴んで走りだす。痛い!痛いから!お願いだから話はちゃんと聞いて!とりあえず、カトレアちゃんに手を振って、キャッスルを後にした。









***

「工場長が、負けるって?」
「強い人が来たんだって。まじすげーの」
「でも、レンタルじゃん。わかんないでしょ」
「んー。そーだけど、なんかやってくれそうな気がする」
「てゆうかなんで嬉しそうなの」
「そりゃあ、」


ヘッドはいっつも勝ってるから、負けるのは希少だし、なんかレアじゃん。つーかファクトリーの奴らは大抵そう思ってるから、というピロシキを見て、さっきのカトレアちゃんを思い出す。うん。なんだろう、この温度差は。


「あ、あのさ!強い人って若い?」
「え?若いっちゃあ若いけど。コクランさんくらいの人だよ」


それがどうした。そう聞かれて、私は何でもないといった。どうやら執事さんに勝った虫タイプの強い人とは違うらしい。なんとなく、ほっとした。きっと、彼ではないだろうけどイヤな予感しかしない。なるべくその人には会いたくなかった。

どんっ

考え事をしながら歩いていたせいか人と正面からぶつかってしまった。すかさずスイマセンと一言だけいってまた歩こうとした。だけど、歩けなかった。だってぶつかった人が私の腕を掴んじゃってるんだから歩けないでしょ。


「エニグマ…?」


どこで間違ったかは知らないけど、最悪な方向で話が進みそうなことはわかった。


「リョウ、くん」


なんでこんなところに居るんですか。仕事しなさい仕事。



(運が悪いとしかいいようがない)
091130

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