「社員旅行に行ってきたのでしょう」


私は今、ついさっきカトレアちゃんに逆ナンのごとくお茶しませんか、と誘われたので(仕事はおいといて)(これをサボりという)ウキウキしつつ優雅にお茶会に参加中である。そんな中、聞かれた一言に私はきっと顔を歪めたに違いない。なぜなら社員旅行は散々だったからだ。ホテルの予約がちゃんとできていなかったせいでまさかの日帰り旅行に急遽変更。にもかかわらず皆のしたい事を詰め込んだ予定は変更されずとんだハードスケジュール。あれは1日でやることではありません。社員旅行のはなしをすれば、カトレアちゃんはあら、楽しそうね、という。楽しい。楽しいの次元を越えてますあれ。


「羨ましいわ」
「そうでもないよー。あ、カトレアちゃんも今度行こうよ」
「行くって?」
「遊びに!執事さんには秘密で。ね」
「ふふ。そうね」


約束ね!と小指を差し出せばカトレアちゃんは絡めてくれた。綺麗で色白な手。カトレアちゃんは何かのビョウキらしい。私にはよく分かんないけど。そういえば前に私はコクランが居ないと何もできないの、と言っていた。それを思い出して、今日はその執事さんの姿が見えない事に気づく。カトレアちゃんを置いて何してるんだあの人。私がキョロキョロとまわりを見ているとカトレアちゃんはふふっと笑って執事さんの名前をだした。なんだあ、何でもお見通しみたいでなんか悔しいなあ。


「昨日挑戦者がきてね、コクラン、負けちゃったのよ」
「え!執事さんが?」
「ええ。相当ショックだったみたいね。相手はまだ若かったし。修行し直してくるっていって、朝にはもう居なかったのよ」
「へー、あの執事さんがねえ。ちょっと意外」
「ふふ。変な言い方ね。貴女も彼に勝ったじゃない」
「そーだけどおー」


確かに私は執事さんに勝ったけどあの人もかなり強かった。簡単に負けるような人じゃないのはたった一回しか戦ってない私にでもわかる。どうやら、私たちが旅行にいっている間、強い人が来てるってことか。ふーむ。


「その、挑戦者なんだけどね」
「うん」
「使うポケモンが3匹とも虫タイプで、コクランにはそれが余計にショックだったんじゃないかしら」


たまにはいい薬ね、と付け足したけどなんだか淋しそうだった。負けてほしくなかったんだろうな。そりゃそうか。それにしても、虫タイプ。何かイヤな予感がする。そんなわけない。彼がこんなところにいるほど暇じゃないことは私がよく知っているじゃないか。そう思い直して紅茶を一口、口に含んだ。


「おーいエニグマ!」
「ぶっ」
「うわ、汚ね」


突然入ってきたピロシキに私はなんにも心の準備とかそんなのしてなかったばかりに口のなかに含んでいた紅茶を吹いてしまった。それでもカトレアちゃんは冷静にピロシキさん、ごきげんようとか言ってるし、ピロシキはピロシキでごきげんよーと普通に返していた。


「お、お前が意気なり話しかけるからああ!はっずかし!こんなん小学校以来だしー」
「落ち着けって。つーか何言ってんのか分かんないから」
「ピロシキこのやろー!表出ろ!」
「ははっ。エニグマはいつも元気なー」


豪快に笑って私の頭を撫でまわす。うわっ!頭ぐちゃぐちゃだし!笑ってないで助けてくださいカトレアちゃん。



(てゆうかピロシキの奴何しに来たんだ)
091130

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