「あれ、ヘッドは?」
「お嬢のところだよーん」
「ああ。とばっちり受けてるわけね」
「てゆーかピロシキ臭い!近寄らないでよ」
「え、なんか酷くない」
「酷いのは仕事しないお前らだ」


たなっちは相変わらずの仏頂面でいう。仕事っつったって今日はお休みだしなんで休み献上してまで働かなきゃなんないわけ?給料もでないのに?爪の手入れしながらたなっちに言ったらより一層眉間に皺をよせる。そういやあんたその顔よくするよね。


「ならなんで出勤してんだ」
「そんなの、」


どうせたなっちだってわかってんでしょ。そんなこと聞かなくたって。久々の休みにわざわざサロンもショッピングも彼氏とのデートだって振り切ってこんなとこにいるわけ。ピロシキだってきっとあたしと一緒だし。じゃなきゃジムとかトレセンとかじゃなくて、わざわざこんなとこで筋トレしないでしょ。たなっちだって一緒なんじゃないの。機械のメンテとかいってそんなの口実で待ってんでしょ。どうせみんな一緒なんじゃん。


「もう5日だもんなあ」
「まだ5日だし」
「確かに。長かったなあ5日」
「ふん。アイツ本当に生きてんのか」
「さあ。でもなんか大丈夫な気がする。感だけど」


5日。あたしにとってはちょう長い5日間だった。1年だってこんなに長く感じたことない。それもみんな一緒みたいだけど。


「いなくなった時みんなすごかったよなあ。メイなんか涙真っ黒だし」
「うっわ。乙女の涙を笑うなんてサイテー」
「どこに乙女がいるって」
「酷くなーい?たなっちだって意気なり飛び出しちゃって、あの時は焦ったし」
「あ、あれはだなあ。またアイツが変なことしてるのかと思ってだな」
「でも1番はヘッドだよなあ」
「あー、ね、あれはすごかった」
「レンタルポケモンフル活用はなあ」


あたしたちの慌てっぷりもすごかったけどヘッドはそれよりすごかった。レンタルポケモン全部出しちゃうんだもん。伝説とかも全部。どんだけ焦ってたんだろう。あたしもいっぱいいっぱいだったからわかんないけど。そのヘッドは後でタイクーンに怒られてた。まあ、さすがにねえ。


「なあ、ヘッドってさあ、」


トゥルルルル
突然の電子音がピロシキの言葉を遮る。ポケギアということはすぐにわかった。てゆーかなに。なんなのこの変哲ない着信音。


「誰かポケギア鳴ってるよ」
「ああ俺だ」


やっぱりあんたって期待裏切らないね。初期設定とかありえないんですけどお。そんなたなっちはポケギアを一向に取ろうとはしない。


「取らないの?」
「非通知なんだが」
「あれじゃない。ポケセンからかも」


たなっちは少し考えるようにけたたましく鳴り響くポケギアを見つめて暫くしてからとる。


「もしも、……エニグマ?!」




(え、今なんて?)
091005

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