彼女は緑色が大好きでした。まあるいものが大好きでした。はじめて彼女が僕を見たとき、彼女の瞳はこれでもかといわんばかりに輝いていて、割れ物でも扱うかのような手つきで僕に触れました。そんな瞳で見られたのははじめてでした。そんな風に接されたのもはじめてでした。すぐさま僕はしゃべり子のポケモンになりました。

しゃべり子は愛で溢れる愛の人でした。僕はそれを全部あますことなくのみこんでいきます。すきだよ。すき。あいしてる。しゃべり子が僕に与えるものはびっくりするほど甘くて楽しくて嬉しくて幸せでした。だけど周りは真逆で辛くて酸っぱくてかなしいばかりでした。なんだあれ。よわいくせに。きもちわるい。僕はそんなやつらに全てはきだしていきました。だけどしゃべり子は僕を制止していいます。いいのよ。だいじょうぶ。あいしてる。と。僕もしゃべり子を愛してる。しゃべり子にもらったものをはきだせば、しゃべり子は綺麗に笑いました。ありがとうをまた僕はのみこみました。

不変なんて、この世に存在しないのだと誰かがいいました。権力も地位も時間も土地も生も愛も、頭の先から爪先さえ変わらないことなんかないのだと。変わるのはいつも突然で、優しく包み込むこともあれば、鋭く突き刺してくることもあるのだと。僕の変化も突然でした。ふつふつと力がわいてくると思えば、みるみるうちに視界が高くなって体が大きくなって紫色になりました。しゃべり子が大好きな緑色でも丸いものでもなくなってしまった僕は、もうしゃべり子の愛した僕ではなく、紫色な大きい物体でした。ああ、ただの物体ではしゃべり子に愛してもらえない。僕は泣きました。愛してもらえないただの物体の僕はどうやって生きればいいのかさえ解らなくて、道なき道を這って這って這って、そこで延々泣きました。ふと、後ろを振り返ると、僕の愛した人が泣いていました。見ないで。来ないで。泣かないで。だけどしゃべり子は僕をじっと見据えて、歩み寄りながら泣いていました。僕を優しく包み込むとしゃべり子はいいます。いいのよ。だいじょうぶ。こわがらないで。

「マルノーム、あいしてる」



変態/120108
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1.形や状態を変えること。また、その形や状態。
2.普通の状態と違うこと。異常な、または病的な状態。
3.性的倒錯があって、性行動が普通とは違っている状態。変態性欲。
(goo辞書より引用)


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