日にちはあっという間に過ぎていった。本当に、あっという間だ。イヤだ、行きたくないばかりいっていたのがひと月くらい前のことだけど遥か昔のことみたいに思えた。あれからディランくんのサッカーの練習に何回か、試合も一回だけ見に行った。サッカーをしているディランくんを見ているとアメリカのジュニアサッカー界のエースとゆう、小市民の私にとっては大きすぎる肩書きがずっと頭の中を駆け巡る。マークくんとも何度か会った。とゆうより、よくキース宅へ遊びに来ていた。ディランくんとマークくんは日本でゆうマブダチらしい。あと、一之瀬くんと土門くんにも一度だけ会った。こんなところまできてまさかクラスメート以外の日本人に会うなんて思ってもみなかったから心底驚いた。彼らもディランくんたちとチームは違うけれどサッカーをやっているのだという。アメリカ代表として一緒に世界と戦ったこともあるとか。FFI見てなかった?と一之瀬くんに聞かれたがノーとしか答えられなかった。この数日そんな感じにアメリカてゆうよりサッカーのことを少しだけ詳しくなっていったわけだが、詳しくなっていった分だけ別れも着々と近づいていき、とうとう明日には帰国とゆうところまで来てしまった。ママさんとパパさんは気を利かせてか、ホームパーティとゆう、なんともアメリカらしいことを企画してくれた。集まったのは主に近所の人たちとディランくんのチームメイトの人たち。私が英語をろくに話せないから余り話すことができなかった人もたくさんいたけれど、私が帰るのだと聞くやいなや涙を流して別れを惜しんでくれた。これもアメリカのよさなのだろう。マークくんが皆からだと言って花束をくれたり、キッドくんは俺のとっておきのやつだからと言っていつも被っているカウボーイみたいな帽子をくれた。ホームパーティはまさにどんちゃん騒ぎで最後の最後にいい思い出ができたと思う。
部屋で荷造りをしているとディランくんがやってきた。いつもの彼の元気はない。少し心配になって声をかけると抱き締められた。なんだか最初にディランくんと会ったときのことを思い出す。あのときもこうやって抱き締められたなあ。あのときはどう対応していいか分からず不安で一杯だったけど、今なら抱き締め返すことができる。そこでディランくんが泣いていることに気付いた。そして私も無意識に涙がポロポロ落ちるのだ。所謂もらい泣き。私が泣いていることに気がついたディランくんは少し笑って何かを言った。もちろん何て言ったかなんて分からない。ディランくんは私の涙を拭う様に目もとにキスをする。なんとも恥ずかしい行動だったけど私の涙は止まらなかった。この一部始終を見ていたママさんにあらあらといった風に目を細められるのだった。それもこれもディランくんのせいだ。



出発日、ママさんとパパさんがわざわざ見送りに来てくれた。ディランくんはサッカーだとゆう。最後に顔が見れないのは私を少しだけ寂しい気持ちにさせた。飛行機に乗り込む寸前に2人に別れの挨拶をした。元気でね、またいつでも来なよそう言ってくれた2人にまた涙腺が緩んだ。
飛行機に乗り込んでしまえば2人の顔は見えなくて、見慣れたはずのクラスメート達の顔がいくつも見える。あの男子はディラン・キースとサッカーをしたのかと何度か聞いてきたから自慢気に何回もしたよ、と嘘をついておいた。実のところ一回たりとも一緒にサッカーをしていない。出発してしまえば機内はとても退屈だった。だいたいの人は寝るかヘッドフォンをつけている。私は退屈しのぎに本でも読もうと思ってカバンを探ったら、見覚えのない封筒がでてきた。真っ白な何も書かれていない封筒だった。糊もついていない。中を覗くと一枚の紙切れが入っていた。その紙切れに書いてある至ってシンプルな文章を見て、ここが機内であることも忘れて私は少しだけ叫んだ。

"I love you"




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