お兄さんはあたしよりも先におばあちゃん家に入っていっちゃった。あたしは少しだけびっくりしてすぐ後に続いて入ったんだけど、お兄さんはおばあちゃん家のことを何でも知ってるみたいにするすると居間までいく。そんであたしとルリちゃんに「そこに座っててよ」っていって台所のほうにすたすたと行ってしまった。どうしたらいいのかわかんなくてお兄さんに言われた通り座ることにした。だって何が何だかよくわかんないんだもん。座ったまま周りを見渡せば去年となんにも変わらない風景なのに全然違うものに感じた。今まではこの居間にあたしとルリちゃんだけなんてあり得なかったんだ。パパかママかおばあちゃんか、誰かが居たのに今は誰もいない。それだけで知らない人のお家みたい。へえんなの。少ししてから多分麦茶かなあ、それが入ったコップを3つお盆に乗せてお兄さんが持ってきてくれた。お礼を言ってから麦茶を受け取って、ちらりとお兄さんを見れば、緑色の髪に伏せがちな目がなんだか寂しそうに見える。うーん。お兄さんは誰なんだろう。まさか、まさか、おばあちゃんの恋人とか。確かそんなテレビコマーシャルもあったものね。おばあちゃんだってオンナノコなんだもの。恋をしたって不思議じゃないよね。「ボクの顔になにかついているかい」あたしも知らないうちにお兄さんをじろじろ見てたみたい。少しだけのつもりだったんだけどな。お兄さんは少しだけ困ったような顔だった。「あの、おばあちゃんは…?」少しだけ縮こまって聞いてみる。だって知らない人なんだもん。もしかしたらおじいちゃんになる人かもしれないんだもん。「今出かけてるみたいだね。畑にでも行ったんじゃないかな」お兄さんは早々と答えてくれた。畑かあ。今年もキュウリとかトマトとかナスビとかトウモロコシとか、いっぱいいっぱい実ってるんだろうなあ。野菜はちょっぴり嫌いだけどおばあちゃんが作る野菜はなんとなあくおいしい気がするんだ。ねえ。お兄さんが声をかけた。ここにはあたしかルリちゃんしかいないから多分あたしに。


「何ですか」
「キミは誰だい」
「あー、うん、あたし、ここのおばあちゃんの孫です」
「おばあさんのお孫さん?」
「おばあちゃんのお孫さん」


お兄さんは誰ですか。あたしのおじいちゃんになるんですか。聞きたいことは山ほどあったんだけどガラガラって玄関の引き戸が開いたみたいな音が聞こえてきたからそんなこと吹っ飛んでしまった。みたいなじゃなくてきっとそうだ。きっとおばあちゃんだ。そう思って玄関まで小走りでいけば野菜のいっぱいはいった竹か何かで編まれたカゴをもったおばあちゃんがいた。「おばあちゃんただいま!あれ?おかえりなさい…?」ご近所迷惑とか考えずに声を張り上げていったら、おばあちゃんは一瞬ポカンとしたけどすぐに豪快に笑って「チカは相変わらずだねえ」といって頭をなでてくれた。あたしは野菜はちょっぴり嫌いだけど、おばあちゃんの笑った顔は大好きだ。家の前に咲いてるひまわりみたいに大きく笑うの。「おや、N。帰ってたのかい」ふと後ろを振り向くとお兄さんが立っていた。



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