ごほ
ごほごほごほ
静かな夜に咳き込む音だけが響いた。混沌とした暗闇が辺りを包み込む。わたしが一人きりであることを強調されたようで、より一層咳き込んだ。嗚呼、馬鹿馬鹿しい。目を開けると、赤色が広がっていた。
「人識、」
ごほっ
なんだか気が狂ってしまいそうだった。
人識人識人識人識人識人識人識人識人識人識人識人識人識人識人識人識人識人識人識人識人識人識人識人識人識人識人識人識人識人識人識人識人識人識人識人識人識人識人識人識人識人識人識人識人識人識人識人識人識人識人識人
「よお」
「ひとしき、」
「随分苦しそうだなあ」
ごほごほごほ。
意識が遠退くのがわかる。まって。やっと会えたのに。やっと会えた、兄弟なのに。
「ゆっくり眠れよ。気が向いたら起こしてやるから」
その言葉と同時に唇になにかを押しあてられた。なにかはわからない。わたしの記憶はそこで途絶え、た。
ただ、待つことしかできない
(いつ目が覚めても大丈夫なように)