「俺は、野球がしたいんだよ、御幸。」


うん、知ってる。


Lovers Again


「でさぁ…。」

ひらり。

視界の隅に映った鮮やかなスカイブルーに、過剰に反応して振り向いてしまうこの頭が憎い。

ひらり、ひらり。

風に揺らめくマフラーの青は、アイツが雪が降る冬によく巻いていたお気に入りのマフラーと同じ色。
「きゃはははは!」
スカイブルーに埋もれる、知らない、顔。
熱望していた人物とは違う顔に思わず立ち止まって俯いてしまう。

あれ、俺こんなに弱かったっけ…?

栄純と別れてからもう二回目の冬が来ようとしていた。
温暖化だと騒がれる中で気温はまったく上がらず、今年の冬も肌を刺すように風が前髪を拐う。
どんよりとした灰色の空が自分の顔色みたいでちょっと笑って、なんだか馬鹿馬鹿しくも感じてしまいまた俯いた。

『御幸とは、もう一緒にいられない。』

すっかり色を失った唇を噛み締めて涙を堪えた愛しい子に告げられたその言葉は、まるで死刑宣告みたいに重苦しくて。
一瞬にして俺から何もかもかっさらって消えてしまった。
予感はしてた。
お互いを好き合うばかりに他のものが御座なりになることも、それが俺達から確実になにかを奪っていくことも分かっていた。
野球ができなくなるくらい、俺達はお互いに溺れたんだ。

『じゃあ、別れよっか。』
『…うん。』
『ん、バイバイ。』

さよならは、俺から言った。

栄純の口からそんな言葉を聞きたくなかったからの先手。
後悔?
そんなのしなかった日がないくらいしたさ。
「はぁ…。」
肺の中で押し潰された息が冬の空の下に重く重く、吐き出される。
一人になって気付く、果てしない喪失感。
何度も確かめあった愛の証は今はもう曖昧で、心に切なさだけを残すばかり。
何度も再生した二人の記憶は儚く擦りきれてしまって、虚しさだけを再生するようになっていた。

『俺は…平気だから…。』

唯一残っている栄純の声は、最後にそう呟いた泣きそうな、強がりな声だけ。
なにも聞いてないのにそう言った栄純は、その時どんな事を考えていたんだろうか。

『俺の投げる姿が好きだって、御幸は言ったよな。』

『俺は、御幸が好きな姿のままでいたい。』

涙を長すまいと強がってたアイツ。
その時抱き締めてやれてたら…なんて、巻き戻らない時間に辟易しながら俺は生きている。
ただ、生きている。
「こんな永遠より、栄純との一瞬の方が…幸せだった…。」
ぽつりと呟いた言葉はトラックの爆音に消されて誰にも届かない。
…届かず、消えていいのだろうか。


「…会いたい。」


痛みと共に絞り出した願望は、二年ぶりに出た本年。



「栄純に、会いたい…。」



バカでも往生際が悪くても、それでもまだ好きなんだ。
もうきっと、この先あんなに人を好きになることなんかない。
諦めて想い合えなかった俺たちだけど、今なら、今なら…。





「…御幸?」





もう一度会えるなら、今度は絶対手は離さない。
愛してるを迷うことなんかない。
だってこんなに求めてる。


「栄純…愛してる。」


久々に抱き締めたコイツは小さくて、二年前より細くなった顔で泣き笑い。
その首に巻かれたスカイブルーのマフラーが、ひらひらと風に踊っていた。



熱い刹那を



夕季様へ!
すみません!;
この曲名曲過ぎて私駄文しか絞りだせませ返品可能ですのでもしよければもらってやって下さい!
ありがとうございました。

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