「今日もかっこいいね、緑間くん!」
「・・・・・・」
「やっぱエース様は違うよね!あ、肩でも揉みましょうか」
「やめろ苗字、気持ちが悪いのだよ」
「私を罵ることによって緑間さんの鬱憤がなくなるなら、どうぞどうぞ罵ってください」
「俺が変な目で見られる、黙れ」
「きゃー!素敵!」
「・・・・・・言いたいことがあるのなら言え」
「さすが緑間、話が早い」

そう言って放課後、私が緑間を連れ出したのはとあるゲーム屋。
CMを見た瞬間から欲しくてたまらなかったゲームを手に取り、レジへ並ぶ。

「俺がいつ買ってやると言った?」
「いやいや、自分で買うよ。緑間にやって欲しいことはその後」

状況を掴めずに、渋い顔で会計中の私の隣に並んでいる緑間。
ゲーム屋自体が珍しいのか、レジの近くに並んでいるカードパックのパッケージをじっと見ている。
・・・・・・大きい子供みたいでちょっと可愛い。

「お会計4500円以上の新作をお買いになられたお客様のみに行っているクジがございます」
「あ、やりまーす。緑間、ほれほれ」
「ん?」
「ひいてひいて」
「・・・・・・」

私が強引に緑間にひかせ、黙って緑間がひいたそのクジをレジのお兄さんに渡す。
すると・・・・・・。
ちゃりらりらーん。
ベル特有の音色が響いた、ちょっと恥ずかしいあれ。

「おめでとうございます!一等です!」
「よっしゃあああああああ!さすが緑間!信じてた」
「・・・・・・」
「一等の商品はこちら、新作××のソフトです!」
「ありがとうございまーす!」

何でベルを鳴らす必要があるのだよ、と呟きながらゲーム屋の自動ドアをくぐる緑間。
その後姿を追いかけながら、私はきっとニヤついていた。

「ありがと、緑間」
「お前が言っていたのはこれか」
「うん。どっち買おうか迷ってたんだけど、今キャンペーンやってるらしくて。それならいっそ両方ってね」
「それで俺にひかせたのか」
「いいじゃん、私は得したし」
「俺は何の得もしてないのだよ!」
「どーどー。うちんちケーキあるし、おいでよ。一緒にやろ」
「・・・・・・そういうのは高尾とやれ」
「高尾とはやりすぎて行動パターンが読めてきた」
「・・・・・・」
「まぁまぁ、ゲームやらないにしろクジのお礼でケーキ食べにおいでって」
「いきなり行って、迷惑にならないのか?」

あー!緑間、礼儀正しすぎて涙が出る!
高尾はそんなこと言わなかった!アイツは言わなかった!やっぱ違うよ、緑間!
育ちのよさが伺える、その発言に心打たれたよ!

「うん、平気」
「・・・・・・」
「よっしゃ、レッツゴー」



ぴこぴこ
がしゃーん
ばきばき
しゅっ

てろてろりーん

「やっぱコレ、今までとが完成度が違うなー。グラフィック綺麗すぎ」
「ゲームはどれも同じじゃないのか」
「それが違うんですよね、本当に。色々やっていくと分かるって」
「・・・・・・?」
「じゃあ、おは朝のラッキーアイテムで【ペン】と【シャーペン】なんて同じでしょ」
「馬鹿かお前は。違いの差は明らかだ」
「それと一緒ってわけ」
「分からないものだな・・・・・・」

座談しながらゲーム(ちなみに格ゲー)をする私たち。
今までの結果、七割以上の勝者は緑間。
と言っても緑間は普段、ゲームなんてしてないからお世辞にも上手いとは言えない。
そんな初心者相手、しかもお礼をする相手をボッコボコに叩きのめすのは頂けない。

というわけで、緑間も気持ちよくプレイできるようにそこそこ僅差にして負ける、という八百長試合が何度かあった。
もちろん、ゲーム上級者として負け連続も嫌だったので何度か勝ったけども。
それでも高尾とは違う、おだやかに楽しくゲームをするのは非常に楽しかった。


「俺はそろそろ帰る」
「おーう、じゃあね。送っていこうか」
「必要ない、何で俺がお前に送られなくてはいけないのだよ」
「冗談だって、じゃあね」
「あぁ」

玄関までお見送りして、くつを履いた緑間が一度くるりと振り返った。

「ん?」
「あと、わざわざ俺に付き合ってくれてすまいな」
「え」
「じゃあな」

何とことかと思ったら、多分私がわざと負けたことだろう。
緑間は気づいてたんだ。
自分があんまりゲーム上手じゃなくて、そして私がわざと負けたことに。
プライドの高い緑間のことだし、きっと嫌な思いをさせてしまったんだろう。
玄関にあるサンダルを履いてあわてて緑間を追うと、いつもの緑色の背中が見えた。

「緑間!今日はありがとーう、また一緒にやろうねー」

大声まではいかない、大きめな声でその後姿に言葉をかけた。
私の声が届いたの緑間は、少し後ろを振り向き

「次は実力で勝ってやるのだよ」

と、そう言っていた。
勝たされて嫌な気分だったでだろう緑間の顔は、何故だか嬉しそうだった。


(緑間の為に、今度は推理ゲームでも買ってみるか)
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