「あっちーな」
「黙れ高尾。暑いと口に出すと尚更暑く感じるのだよ」
「お決まりの突っ込みすんな緑間、もっと面白いこと言え」
「苗字は俺に何を求めているんだよっ!」
「・・・涼しさ?」
「ぷぷっ!真ちゃんマジになんなって!」
「黙れ高尾」

部活帰り、今日は歩きで三人並んで帰る。
左から私、緑間、高尾。
ほら、背が高い人が真ん中にいた方が見栄えいいじゃん?(高尾がそう言ってただけ)

「何でセーラー服に襟が存在するんだろ、冬服はともかく夏服にはいらなくね」
「襟がなかったらセーラー服じゃなくなるのだよ」
「名前ちゃんはセーラーのよさを分かってねぇんだよ」
「男のロマンの為に何でこっちは暑い思いしなくちゃいけないの?」
「・・・ごもっともです」

てか、もう何でもいいよ、別にどでもいいよ。
っていうかこの暑さで、そのセーラーの話題もどうでもよくなった。

「あ、コンビニ。・・・私寄ってくるから帰っていいよ、じゃあね」

アイスかジュースか飲みたい、と思って二人に別れを告げてコンビニに向かう。
自動ドアが私を出迎えてくれて、アイスコーナーに一直線。

雪●大福とかスーパー●ップとか食べたいかも、なんて思いながら棚を見渡す。
まぁ、一つ突込みたいことが・・・。




「帰ったんじゃないのか、二人とも」
「またまた水臭ぇな名前ちゃん、こういうのは皆でやって青春を味わうもんだぜ」
「俺はお前らが来なくても、一人で来ていた」
「とりあえず、肩に回している腕をどかせ。暑い、離れろ」
「うそつけ、ここ超涼しいじゃん」

ニタニタを私の反応を見て笑う高尾和成。
そういうのは彼女にやれ。じゃあ名前ちゃん彼女になってよ。た、高尾・・・。
とかそういう流れには決してなりませんよ、皆さん。

「じゃあ恒例のジャンケンで負けたやつが奢りってことで」
「待て、私は一人で来たんだ。二人でどうぞ」
「俺と真ちゃんが二人でやったら、俺負けちゃうだろっ」
「当たり前だ、俺は人事を尽くしているのだから」
「はいはい。やりますよ、えぇ」
「さすが、じゃあ・・・ジャンケンっ」

ポイっと出した私たちの手はパー、パー、グーの二種類。
私はちなみにパーだ。この時点で残りの二人の一人の負けが決定。
もちろん緑間ではない、ってことで。

「高尾くーん、ご馳走様でーす」
「ふん、言いだしっぺが負けるなんて情けないな」
「ああああああああああ」

半泣きになりながら私たち三つのアイスをレジに持っていく。
私が週間漫画とコーラを持って、その高尾の後ろのレジに並ぶ。

「もう今月、どこにも行けねーよ」
「だったら行かなければいいだろう」
「そういう問題じゃねえだろ!」
「落ち着いて、高尾。ほら」

はい、と差し出したのは先ほど漫画と一緒に買ったコーラ。
高尾は?マークを浮かべて首をかしげている。
あ、可愛い・・・っていうのは置いておいて。

「今までの奢りの十分一は、コレくらいでしょ」
「名前ちゃん・・・!」

コレっていうのは、このコーラの値段のこと。
お察しの通り、高尾は私たちに高い額を奢らされているのだ。
もちろん私も、学生にとってのお小遣いというものはどれほど大事か分かっている。

「ありがとおおおお!名前ちゃんのその気持ちだけで、胸がいっぱいだよ!」
「でも財布は空っぽだぞ」
「何で真ちゃん、そういうこと言うのっ!?」


私がコーラあげても高尾はマイナスで、私はプラスなのは変わってない。
まぁ、そんな嬉しそうな顔してる高尾には言わないであげるけどね。
・・・なんて思った部活帰りの夏の日のこと。
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