「名前はさ、結局どっちなの?」
「え、何が」
「だから!緑間くんと高尾くん、どっちが好きなの?」
「えっと、それはそういう意味で・・・ですよね」
「当たり前」
「いやいや、私が好きとかありえないから」
「本当に?」
「本当に」
「ふーん。でもさぁ、きっと緑間くんか高尾くんは名前のこと好きだよね」
「何でそうなる」
「だって、いつも三人でいて仲良しそうじゃん」
「いやまぁ、仲はいいけどさ。絶対に二人は私のことそういう目で見てないから」
「何で分かるの」
「【友達】だから」
「全く、名前ったら・・・」





昨日、女の友人との会話を思い出す。
私が二人を好きだって?ないない、ありえない。
確かに友達やってても、「かっこいいな」とか「優しいな」とか「楽しいな」とはもちろん思う。
私だって人間だ、それくらいの感情は芽生える。
でも所詮それは、それ止まり。
異性的な恋愛感情に結びつくことはない。

じゃあ、逆は?って聞かれてももちろん、ないない、ありえない。その一言。
もしもこの二人のどちらかが私のことを好きだったとしたら、こいつらは頭が可笑しい。
何でそんなこと言うのかって?
だって、そりゃあ・・・・・・。






「くっそおおおおおおお!何でこうなったあああああああ!」

何が楽しくて女子高校生の私が、男子高校生二人を乗せたリアカーをチャリで運ばなきゃならんのか。

「往生際が悪いなぁ、負けたのは名前ちゃんだぜ?」
「そうだ。人事を尽くしていないくせに俺に挑むなどの無謀な行為をした結果だ」
「私は高尾に誘われてやっただけだっての!」
「ほらほら、早くしないと遅刻しちゃうぜー!」

事の発端は少し前に遡る。

私はいつも通りに家を出た。
すると、いつもの変てこな乗り物(二人はこれをチャリアカーと呼んでいた)で二人を遭遇した私。
そこで、私に気づいた高尾が「名前ちゃんも一緒に混ざっていけって」なんて言って無理矢理私をジャンケンに参加させた。
前に何度か参加したけど、珍しくジャンケンの神様が私に微笑んでくれたようでチャリを扱ぐハメにはならなかった。
だけど今回はどうだろう?
見事にいつも負けている高尾に負けてしまい、私はバスケ部員の二人を乗せているチャリを扱いでいるのだ。


「お前ら、本当に重いってば・・・!」
「俺たち標準っしょ」
「何でマネージャーが部員乗っけてこいでるんだよっ!」
「苗字、今日のお前の運勢は最悪なのだよ」
「それをジャンケンする前に言え!」
「何で俺が」
「ぶっははははは!最高だよ、真ちゃん」
「高尾も笑ってんじゃねぇええええええ」


ね?
これでこの二人が私を異性として見てるわけじゃないって証明できたでしょ。
これで本当に告白でもされたら、私は人間不信になるね。


「名前ちゃーん、頑張れー!かっこいいー!」
「お前よりはな」
「真ちゃん、それ男の俺に言う?」
「いやいや高尾、それ女の私の前で言う?」


すんごい重いし、疲れたし、足も痛いけど、後ろで繰り広げられている楽しい会話の主の友人たちに免じて、今日は学校まで送り届けてやろう。


(あー、疲れたあ゛あ゛あ゛)
(いやーお疲れ!まじで男前だったよ)
(あぁ、俺たち二人を運ぶなんて認めてざるえないだろう)
(・・・・・・)
((照れるとこ違うだろ・・・))
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