「はぁ」
「何、どうしたの」
「どうせ分かってんだろ」
「いや、」
「和成の予想通りだよ、多分というか絶対」
「フラれたんだ」
「そんなはっきり言わなくても・・・」


放課後の教室で、一番後ろの席の机に項垂れる幼馴染。
その幼馴染――苗字名前は先ほど彼氏にフラれたようで泣き崩れている。
・・・まぁ、その目に涙なんてなかったけども。
それでも彼女の目には悲しさとか裏切りを知ったような、そんな感情が映し出されていた。


「そんなにソイツのこと好きだったのかよ?」
「違う。嫌いじゃなかったけど、好きではなかった。告白だって向こうからだし」
「じゃあ、何でそんな・・・」

落ち込んでるんだよ、と続けたかったがそう言うと尚更落ち込んでしまうのが俺の幼馴染。
そして、その言葉を聞かなくても大体察してくれるのもまた、俺の幼馴染。


「苗字は俺がいなくても大丈夫なんだ。一人でできる。俺は何も力になってやれない、ごめん」

それの台詞はコイツじゃなくて(まぁ、コイツが言ったんだけど)、コイツの元・彼氏のものだろう。

「何それって感じだよね。私はそんなにデキた人間じゃないんだってばー」
「フラれるパターンが最早恒例となってんな」
「本当に何でだろうね・・・・・・」

最後の名前の言葉は俺に向けられたものではなく、だからと言って誰かに向けられたものでもなかった。
あえて言うなら、今までに名前に告白して付き合った後に自分から別れ話を切り出した男たちだろう。

「まぁ、お前は昔からしっかりしてるし基本的に人に頼らねぇし?」
「それは、ただの性格しょーが。私だって人間なんだから頼ることだってある」
「それでも元彼氏さんにすれば、もっと頼って欲しかったんじゃねぇの」
「男ってそんなもんなの?」
「好きなやつは守ってやりたくはなるよな。しかもそれは彼女なら尚更」
「ふーん」

実際、名前のことフった男の気持ちなんざ全く知らないが一応、男としての俺の気持ちを吐き出してみた。
世界中の男の考えを全部足して割ったら、俺のさっきの言葉と一緒になるだろ。

「それにさ、お前は告られたやつと付き合うんじゃなくて自分の好きなやつと付きあえばいいんじゃね?」
「それで変わるのかな」
「少なくとも今までとは何かが変わんだろ」

名前は「そっか、そうだよね。うんうん」と一人で妙に納得した後に、ふぅと一息とついた。
そして、何か決心したかのような目を俺に向けてきた。

「じゃあ、和成のことを信じてみますか」
「おっ!今から告白しにでも行くんですかあ!」
「うん」


誰?と聞こうとする前に名前の次の言葉で遮られた。



「和成のことがずっと好きでした。付き合ってください」



とりあえず俺は慌てる以外に何をすればいいか分からなかった。


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