「高尾、お前が大人しいと気持ちが悪いのだよ」
「緑間酷いなー」

あれから数日。
名前とは話していないし、顔も合わせていない。

会いたくないけど、すげぇ会いたい。
でも会いに行く勇気がない。
本当に臆病もんだな、俺も。


「ついで言うと、苗字も大人しい」
「アイツはわりと、前から大人しかったろ」
「あぁ、そうだな。それでも前とは違う」
「名前の違いとか分かるんだ、真ちゃんすげー。彼氏になってあげなよ」
「ふざけるな。その言葉を、そっくりそのままお前に返してやる」
「真ちゃん大体、状況分かってんだろ」
「・・・」


図星か。
名前が緑間に話すわけないと思うし、俺たちの様子からきっとバレたんだろう。
キセキの世代、こえー。

「なぁ、緑間。俺どうしたらいいんだろーな」
「『人事を尽くして天命を待つ』」
「はい?」
「・・・この言葉の意味をよく考えろ」
「真ちゃんキザだね」
「アイツにも同じことを言われた」
「アイツ?」
「苗字だ」

緑間、名前にも同じことを言ったんだ。
その前に名前も俺と同じことを緑間に聞いたんだ。

俺とアイツが同じことをした。
たったそれだけのことに、こんなにも嬉しく感じるのは、やっぱり名前が好きだから。

名前が好きで好きで、しょうがないから。


「さんきゅ」
「お前らは似ているのだよ。ずっと前から、今も」
「そうかもな」

「ありがとな」ともう一度軽くお礼を言えば、緑間はドヤ顔をしていた。
まぁ、ドヤ顔っつーか嬉しそうだったけどな。

親友を言うことも、たまには信じてみてもいいでしょ。

待ってろよ、名前。
お前に言わなきゃいけないことがあるんだ。
叶わないって分かってても、それでも俺は君に伝えないといけないことが。

どうしても抑えられない、この気持ちが。
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