「和成」
「、名前か」
「ごめん、遅くなって。早く帰りたいはずなのに」
「いや、大丈夫」
「和成?」
「何だ」
「いや、あのさ!お好み焼きって何で派手に返したくなるんだろうね」
「何でだろうな」
「あと、コーラにメントス入れるのって卒業するまでの夢だよね」
「そうだな」
大方、俺が部活で失敗したとかで落ち込んでると思ったんだろう。
名前は昔から、帰宅部の自分に励まされても効果ないと思っているらしく、部活のことに首は突っ込まなかった。
運動部には運動部にしか分からない苦しさがあるのは確かだけど、名前の一言で俺は多分あっという間に元気になるだろうな、ってずっと思ってた。
それでも、昔からこうやって名前が俺の変化に気づいて、気遣ってくれて。
わざと関係のない話で盛り上げてくれようとしてくるコイツは優しかった。
でも今日だけは、とても残酷な人間に思った。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「和成、あのね。私さっき告白されたんだ」
「誰から?」
「同じクラスの人」
「・・・何て返事するんだ」
「どうすれば良いかな、」
ちら、と名前に視線を向ければ向こうは俺のことをしっかり見ていて。
ばっちり目が合ったけど、今はコイツと目を合わせられなくて俺から逸らした。
「それは名前が決めることだろ」
「だよね」
「・・・何で俺に話したんだ」
「何でだろ、なんとなく和成に聞いて欲しかった」
「そうか、」
「もし、付き合うことになったら応援してくれる?」
コイツは確信犯なのか。
俺が自分を好きっていうことに気づいていて、俺を試そうとしてるのか。
そしたら、相当性質が悪い。
いや、むしろそうであって欲しかった。
「・・・あぁ」
「そっか、ありがとう」
「・・・もう帰るか」
「うん」
この前みたいな大雨は降っていなかった。
むしろ薄暗くなり始めている空は、赤いような青いような灰色のような綺麗な空だった。
でもあの日みたいな笑い声は、今日はなかった。