※主人公えらく口悪い



「おー!苗字!はよっ!」
「・・・・・・」


「ペアつくれだってよー!俺と組まねえか?」
「無理」


「暇だから部屋まで遊びに来たぞー!」
「死ね!!!!!」

最近ことあるごとに突っかかってくる切島鋭児郎とかいうクラスメイトが鬱陶しい。切島が爆豪に絡んでいる場面を苗字は日々遠目で見ていたが、まさか次は自分がターゲットになるなんて思っていなかった。きっかけは分からない。何故大して親しくもなかった彼が急に自分を気に掛けるのか、心当たりすらない。毎日毎日無駄に絡まれて面倒って言ったらありゃしない。いい迷惑だ。

初めは、あのじゃじゃ馬爆豪を手懐けたもんだからクラスで比較的に浮いている自分に面白がって接近してきたのかとも考えた。しかし、私が切島の誘いを断れば大人しく引き下がるし無視をすればそれ以上は話かけてこない。なんだと言うんだ一体。切島の目的が分からない以上、苗字は何も仕返しすることが出来ない。
かくして切島鋭児郎の一方的な絡みは日々続いている。


「なあ、苗字。飯一緒に食わねえか?」
「アンタと食べるわけないでしょ、どっか行け」
「そんなこと言うなよ!苗字、いつもひとりで食ってるだろ?みんなと食べた方が絶対に美味いぞ!」
「なに?ストーカーなの?きもい」
「キモくてもいいからさ!な?こっち来いよ!」
「ウザイんだけど」

精一杯の嫌悪を込めて切島の誘いを拒否する。少し上に位置するニコニコとした人懐っこい笑顔を思いっきり睨むと切島は少し驚いたような表情をしてを顔を俯けた。

ビビるくらいなら話かけんじゃないわよ。
そう言ってやろうと口を開きかけた私に、切島は逸らした視線を私に戻しながらこう口にした。

「やっと、こっち向いてくれたな」
「・・・は?」
「いや、なんつーか・・・。今までは無視ばっかりだったのによ、今はちゃんと目見ながら話してくれてんだなーって、なんか嬉しいわ」

バツが悪そうな表情を浮かべ、少し視線を泳がした後に切島は微笑んだ。その頬はほんのり赤に染まっていて、何故そんな顔を私にするのかまったく理解できなかった。
そして、何故か私も心がムズムズするような気持ちになってしまったのかも理解できない。できるわけがない。


「切島ってドMなの?きっしょ」
「名前・・・!初めて呼んでくれたな!」
「なんなのほんと・・・」


いつもならつけるであろう悪態も、今日は何故だか出来なかった。
切島から嬉しそうな顔を向けられたからだとは、まだ気付けない。
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