※緑谷目線


「かっちゃん!」
「んだよ」
「今日一緒に帰ろ」
「はあ?めんどくせえ、一人で帰れ」
「いいでしょ!2人が終わるまで待ってるから終わったら連絡ちょうだい」
「え、僕も?」
「当たり前じゃん!」
「なんで俺がこんなクソナードと一緒に帰んなきゃいけねえんだよ!!!名前!」
「じゃあいいよ、出久と二人で帰るから。かっちゃん仲間外れね」
「いや、僕のことは気にしないでいいから・・・!二人で帰りなよ」


僕たち3人は俗に言う、幼馴染みという関係だ。家が近所だから幼稚園が同じで、それから名前ちゃんだけ普通科だけど高校までずっと一緒にいる。昔から、かっちゃんに苛められた時も名前ちゃんはいつも助けてくれたし僕のことを無個性と馬鹿にしたことは一度だってない。だから名前ちゃんのことは大好きだし感謝もしている。
昔は僕も名前ちゃんのことが好きだった時期があるけど今思うにあれはきっと憧れだ。僕の一番初めのヒーローはオールマイトでもなく名前ちゃんだ。女の子だけど。
でももう1人の幼馴染みは彼女に多分、それ以上の感情を向けている。

「いいの、出久に意地悪するかっちゃんなんて嫌いだから」
「・・・・・・・・・・・・わーったよ」

でなければ、あの暴君がたった一言でこんなに大人しくなるわけがない。
幼馴染みとして二人が相思相愛なら応援したいし、お節介かも知れないけど僕に出来ることがあるならやってあげたい。
ただ、かっちゃんは名前ちゃんのことが分かりやすいくらい好きなのに態度は僕と同じくらい酷いし、名前ちゃんに至っては友情なのか兄妹の延長なのかもよく分からないのだ。

「かっちゃんは出久のこと好きなくせに、すぐそういうこと言うんだから」
「あぁ?適当なこと言ってっとブッ殺すぞ」
「はいはい、そんな物騒な言葉使わないの」
「名前てめえ!聞いてんのか!!」

仲間外れにされたくないなら、ちゃんと言えばいいのにねー。名前ちゃんがそう言いながら二人の後ろを歩いていた僕に笑いかける。
仲間外れが嫌なんじゃなくて、名前ちゃんに嫌いって言われたことが応えたんだと思うけど・・・。
そう言ってあげたいがこの場でそんなことを口走ってしまったら、奥で僕のことを鋭い目で睨む彼に爆破されること間違いなしだ。

「本当ムカつくなあ!お前!!」
「もう、かっちゃんうるさい」
「お前が俺をイラつかせたんだろうが!!」
「あ、じゃあ私あっちだから。出久バイバイー!またあとでね」
「じゃあね、名前ちゃん」
「シカトしてんじゃねえ!!!」

校舎の入口で普通科の名前ちゃんと別れたあとに僕らは廊下を無言で歩く。もちろんかっちゃんの機嫌を損なわないように僕は少し離れて後ろから着いていく。
気まずいなぁと思いつつ、いつもより何倍も遠く感じる廊下を歩いていると前にいるかっちゃんが不意に後ろを振り返った。

「おいクソナード」
「な、なに。かっちゃん」
「あいつが男できたとか聞いたことあるか」
「あいつって名前ちゃん?」
「あたりめーだろ!!!いちいち言わすんじゃねえよ!」
「ごごごめん!僕は聞いたことないよ」
「そうかよ」

それだけ確認するとかっちゃんはまた前を向いてズンズンと歩いていった。かっちゃんも気になって僕に聞くくらいなら本人に確かめてみればいいのに。つくづく不器用な幼馴染みだと心の中でため息を吐いたら、かっちゃんがとんでもない爆弾発言をした。

「てめーにもアイツは譲る気ねえからな」

僕のことを初めてライバル扱いしてくれたのは嬉しいけど、とんでもない勘違いをしている幼馴染みからの誤解をどうやって解くか必死に考えなければいけないらしい。

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